アルゼンチンが倒されるジャイアントキリングが、起きましたね。気がつくと途中からサウジアラビアを応援する私がいました。午前4時からのフランス2ー1オーストラリアも楽しい試合でした。しかし一晩に4試合はキツイ。眠いです。今晩の日本ードイツ戦までに昼寝しないと。

11月
22日 奇跡は、泥臭い戦略がテクノロジーを味方にして起きた。
 アルゼンチン1ー2サウジアラビア 

 アルゼンチン36試合無敗の記録がこんな形で終わるなんて、スタジアムの7割を占めるアルゼンチンサポーターは思いもしなかったろう。遥か格下のサウジアラビアに、しかも後半の8分間で2点も決められるとは。メッシのせいではない。彼は最初のPKを決めて役割を果たした。原因はアルゼンチン側に戦略がなかったことだ。

 サウジアラビアは、ハラハラするほど高いDFラインとコンパクトなプレスを維持した。そのトラップにまんまと引っかかったのがアルゼンチン。前半21分のメッシのゴールはオフサイドとなり、26分にラウタロ・マルティネスのドリブルからのシュートもVAR(Video Assistant Referee 半自動オフサイドシステム)で無効になった。オフサイドトラップは決して新しくない。
むしろ伝統的で泥臭い戦術だ。VARがなければオフサイドは見逃され、アルゼンチンは2点加算されていたに違いない。

 1点先制で後半も熱く応援していたアルゼンチンサポーターは、開始8分間で冷凍庫に追いやられる。3分にサウジのアルシェハリ、8分にアルダウサリが連続してゴールを決める。それまで静かだったサウジサポーターが雄叫びを上げる。スタジアムの3割しか占めていない緑エリアが拡大したようだ。サウジGKのアルオワイスが立て続けに見せたファインセーブも、彼らの燃料となった。
サウジサポーター

 陣地に座って苦虫を噛み潰していたアルゼンチン監督のスカロー二が何をしたかというと、後半14分に選手を3人交代。ベテラン勢を下げ、代表歴が短くW杯初出場の若手を投入した。空気を変えたかったのだろうが、メッシの溜息が画面越しでもわかった。それを見てさらに焦ったのか、監督はメッシと同じスペインリーグで戦うアクーニャを26分に出場させる。W杯出場5回目のメッシとベテランのディ・マリアに全てを丸投げしてきた監督には、それしかなす術はなかった。

 他方、サウジ監督のルナールは、後半フィールドの外を白シャツで歩き回り選手にハッパをかけ続けた。
ルナール2022

ルナール2022
2018年にモロッコの代表監督としてロシアW杯デビューしたルナール、俳優顔負けのイケメンぶりで有名になったが、グループリーグ敗退となり戦績は残せなかった。モロッコの前もザンビア、アンゴラといったアフリカ諸国の代表監督を歴任していたため、地を這う型の戦略には慣れている。
地道に仕掛けた”オフサイドトラップ”が、先進のVARにサポートされることまで読んでいたかは知らないが。
ルナール2018

ルナール2018サービスカット)
 警告。同じグループCのメキシコーポーランド戦は拮抗した。両チームが繰り返す猛攻が点にならなかったのは、双方の守護神キーパー、オチョアとシュチェスニーが重ねた奇跡的なセーブによる。スカローニ監督はアルゼンチンとの契約が2026まで延長になったと聞いたが、それは保証されたものではないことをグループリーグのうちに知るべきだろう。
 

11月21日 タレントが湧き出てくる国
 イングランド6ー2イラン 

 決してイランが弱かったのではない。FIFAランキング 20位で日本より上だ。イングランドが強すぎた。暫定監督から始まったサウスゲイトの指導下で、前大会2018を4位で終え、EUROでは準優勝とイングランドは着実に強さを増している。今回のメンバーは2018を経験した選手が11人もいる。きっとケインやマグワイヤが2−3点ずつ取るだろうと予想していた。

 攻め続けるイングランドをイランが抑えて膠着状態の前半、続くゴールラッシュの口火を切ったのは35分ベリンガムのヘディングだった。見事にネットを揺らした後、不敵の19歳は笑うこともなく両手を上げてビクトリーポーズを見せた。W杯デビュー戦で最初の点を取った彼は、ドルトムント(以前香川がいたドイツのチーム)の大黒柱でもある。2点目はサカ。やはり彼も初
W杯でゴールを決める。21歳。
ベリンガム

ベリンガム。イケメンの186cm ©️ゲキサカ
 
 3点目は
W杯3回目のスターリング。常連だがW杯では初ゴールだ。4点目は再びサカが決めた。所属するアーセナルのホームのように得意のドリブルから低めのシュート。5点目はサカと交代で入ったラッシュフォードが、入った直後に決めてベテランの意地を見せた。最後の6点目は、俳優顔の27歳グリーリッシュが右足を振り切った。アシストをしたのは1点目を決めたベリンガム。つまり6点中4点はチームで下から若い二人が確保したことになる。出過ぎる杭は、みんなが伸ばす国。

 こんなに強いイングランドは久しぶり。56年ぶりの優勝もあり得るかもしれない。ベリンガムの
W杯と言われるかもしれない。そうそう、観客席で立ち上がって喜んでいたベッカムの茶色いスーツが素敵だった。どなたかブランドをご存知でしたら教えてください。


11月20日 赤が黒
 カタール0ー2エクアドル 

 赤いユニフォームのカタールが黒星を記録してしまった。開催国が初戦で負けるのは22回のW杯史上初めてのこと。ただ、これは予測できたことでもある。①26名全員が国内でプレイする。外を知らない。②ツルッとした頭のサンチェス監督はスペインのバルサの育成指導を経て、2006年からカタールの国家的な育成プロジェクトに関わってきた。選手のことは誰よりも、たぶんカタール人よりよく知っている。しかし
W杯の戦術については詳しくないだろう。ナショナルチームの監督は、自身が出場経験があるか、他国の監督を経てきた強者が望ましい(日本やオーストラリアの歴史を思い出してほしい)③W杯予選を突破したことがないチームが本戦出場するのは初めて。カタールは出場権を金で買ったと言われてきた所以だ。
 
 開始後3分でエクアドルの主将バレンシアがゴールを決めた。と全世界が思い込んだ。しかしオフサイドと判定された。性格の悪い私は一瞬「あ、これも金で買った?」と思ってしまったが、イタリア人主審の不満そうな顔がアップになった時点で事情がちがうと察する。
セミオート・オフサイドテクノロジー(以後、用語でVAR)による判定で、映像ではエクアドルの別の選手の足が微かにオフサイドラインを出ていたのだ。ごめんなさい、カタール。

 その後、縦に横に黄色いユニフォームが舞うエクアドルの一方的な試合だった。ディスターシャを来た中東のお金持ちのがっかりした顔や、こっちまで聞こえそうな舌打ちをするサンチェス監督の映像が差し込まれてシビアだった。
  
 初めては誰にでもある。悔いのないプレイと現場の雰囲気をカタールの選手には堪能してほしい。「お金で買えない価値がある」と謳ったのは2006年まで大会スポンサーだった赤と黄色のマークのマスターカードだったか。

  

↑このページのトップヘ