2015年03月

 日本にいたときは、人前で食後つまようじでシーハーする人とは一線を画したいと思っていた。たいていシーハーするのは中年以降の男性だったけど女性でそんなことをする人を見ようものなら自分の脳内Photoshopで目の前から消してしまうくらいイヤでした。言い過ぎ?(笑)
 ところがベトナムでは"食後つまようじ"、あたり前なんですね。昨年ホーチミンに着任してすぐ、弊社の女子たち10人がローカルフードのお店に連れて行ってくれて美味しいハノイ料理を堪能したあとに全員がつまようじでシーハーし始めたときのビジュアルショックといったら。凄いなー。びっくりしていたら「Masako san、目が落ちそうだよ」と指摘され我に返ったのでした。
 実際ベトナムではどこの料理屋さんに行っても、必ずつまようじがテーブルに置いてある。紙ナフキンがない店は沢山あるけれど、つまようじのない店はないと言ってよい。ローカルに言わせると、ない店はサイテーだそうだ。写真はベトナムつまようじ。両先端使えます。細みです。つまようじ

 なぜつまようじがこんなに必要とされるのか。 ベトナムの代表的麺フォーを注文すると麺の丼と一緒に葉っぱ(ハーブと彼らは呼ぶが私的には葉っぱ)が4種類ほど載ったお皿がついてくる。またベトナムではライスペーパーに肉や葉っぱを入れて巻いて食べるメニューが各地にあってこれがまた美味しい。歯にひっかかるのは大抵この葉っぱたち。鶏肉も比較的歯にひっかかりやすい。素材にヘルシーで安い胸肉を使っている店が多いようだが、この胸肉、日本より肉の繊維が細いような気がしております。北部は牛すじをよく使うし、美味しいバゲットサンドイッチBanh Miに入っているパクチーなど、歯間に居残りたいお友達には事欠かない感じ。
 というわけで私もついに食後つまようじデビューしました。二ヶ月ほど前に。利点:これをやるとお店やベトナム航空の機内でベトナム語で話しかけられる。欠点:つまようじでつつきすぎたせいか歯間が大きくなる。葉っぱや肉がつまる。つまようじでつつく。のエンドレスループですわ。2mmほど隙間ができた。がー。泣きたい。つまようじ業界と葉っぱ業界がつるんでいるんじゃないか、とまで最近は考えはじめました。マジな話、いったん下がってしまった歯茎を元に戻すのはむずかしそうなので次回東京に戻った際には歯医者さんに相談しようと思います。ベトナムつまようじ業界一人勝ちさせるのも、なんなので。
 つまようじのベトナム生産量を調べようとしてググっていたら、つまようじ資料室なるサイトをみつけました。大阪の光栄社という素敵な会社がやっている。河内長野はつまようじ生産世界一だったそうな。面白い。ここも帰国した際には大阪に脚を運び見てみようと思います。興奮してきた。興味のある方、一緒に行きましょう(笑)。
写真は、つむじ。関係ないけど見事だったので、つい。
 つむじ

 東南アジアには、旧正月と呼ばれる長い休日が毎年2月ごろある。ごろ、と書いたのは、この休みは旧暦で決めるため、毎年日程が変わる。今年は2月19日が元旦で18日の大晦日を含め中国、シンガポールなど大抵の国で16日の週が休日だった。この大抵の国に日本は含まれない。韓国は含まれているけど。 
 ベトナムも今年は長いお正月、通称テトを国民は享受することができた。首相が大晦日だけでなく、16日,17日も休みにしなさいと号令をかけたから。このテト、ベトナム最大の行事といってもよい。何をするのかというと、家族が集まって一緒にご飯を毎日食べる。え、それだけ?と思うかもしれませんが日本の盆正月と同じですよ。帰省することが大事。家族一緒が大事。一緒に食卓を囲むことが大事。だから私のいるホーチミンやハノイにいる人たちは、帰省にそなえてお土産をどっさり買い込む。その内容はお酒からパウダーミルク(ベトナムでは主力栄養食品なので高価なのだ)、子供たちの衣服、ドライフルーツなどバラエティに富む。写真は、大手スーパーマーケットの外に並ぶお土産の数々。トイレットペーパーも立派なお土産。ゴミじゃないです。ラッピング待ちの皆さんです。
Tet2

 テト前の長距離バスや飛行機は大変な騒ぎになる。みんな自分と一緒に段ボール4−5箱分のお土産を持ち帰るから。2月8日、9日は荷物が多すぎるため予定された数の乗客がフライトに乗れないってこともありました。じゃあ、宅急便にすれば?と思うでしょ。しかしそんなサービスは普及してないし、一緒に持ち帰って、頑張った自分、偉くなった自分をアピールすることが大事だから荷物は自分と一緒でなければならないのです。この誇らしくも切ない状況を、今年コカコーラがCMにしました。私のようなガイジンからすると面白いのだけれど、ローカルには今ひとつな感じでした。こういう風に扱われるのはいやなのかな。
 テト前は街中が華やぎます。夜のイルミネーションも通りごとにキラキラ。大きな通りには、テトのお花と企業が出す書割りでつくる簡易フォトブースがあちこちにできて、ベトナムにも最近増えている写真オタクとアオザイ雇われモデルがテト撮影会をしておりました。暇そうなモデルに話しかけたら、ホントはヤだけどお土産買うお金になるからやるよー。テトの前はどうしてもお金のことを考えちゃうよねーと。
Tet1

 そういえば私がハノイでスリに遭ったのもテト前だったな。弊社のローカルスタッフが「Masako san、悪いことが続いたのがテト前でよかった。テトで全部なかったことになるから新年はいいことしかないよ」と口々に言ってくれのが救いでした。いやはやホントに災難続きだったもんなあ、1月から。ローカルスタッフにも、この人やたら可哀相だなあと思われてたんだろうなあ(苦笑)。テトTetは、ベトナム語で節目を意味するんだそうです。遅ればせながら、みなさまにもいいことがありますように。

 

 
 
 
 

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