で、世界の課題発表会となったカンヌの続きです。
30秒から6分程度の映像に、課題とその解決方法のひとつがきちんと描かれている。賛否はおいといて、気になったものを紹介します。
課題その2:テロ。覚えているだろうか、今年1月に起きた を。風刺漫画誌の編集部を襲ったあの事件に抗議して、多くの漫画家が立ち上がった。絵で描くと何が起きるかわからない。だから自分たちが描きたい絵の内容を、音声で淡々と描写するキャンペーン はフィルム部門シルバーを受賞。他にDubus, Quirit2人が語る作品が入賞している。3人のうちKanarとQuiritがPentelのマーカーで描いていると言う。「私もコピー書く時は同じPentel使ってますっ」と心の中でツッコミを入れながら涙がじわり。「二度とやらない。僕たちはこれからも書き続ける」のコピーで不覚にも涙腺崩壊しました。スタジオでラジオ音声を録音している抑えた演出が、いい。こういう重たいエントリーが出てくるとは、私がフィルムを審査した2007年にはこれっぽちも思わなかった。
課題その3:銃。調査によれば、アメリカ人の60%強は銃を持っている方が安全だと思っている。NYにオープンしたGun Shopに若者たちが入っていき、銃を手に取る。「護身のために欲しくて」「それは5歳の子が両親を射殺したやつ」と店員。「マジ?」そんな会話が繰り広げられるThe Gun Shop/States United to Prevent Gun Violence。そう。この店ではアメリカを騒がせた惨劇に実際使われた銃を販売するのです。過去フィルム部門で銃愛好団体に異論を唱えるCMは幾つかあったが、やはりこういう体験型の方が効果があるのでしょうね。来店した客の80%が購入を思いとどまったらしい(はてさて残りの20%はどうなの?)。ブランデッド•コンテント部門のゴールド受賞。
課題その4:ナチス。アンタッチャブルと思われていた領域にエージェンシーが踏み込みました。 Nazis Against Nazis/Zdk Gesellschaft Demokratische Kultur 。ドイツのとある街はこの25年間、ネオナチが毎年集まって行進するイベントに悩んでいました。止めたい、でも止められない。解決策。彼らが1m歩くたびに10ユーロが、ナチスの行動を阻止する団体に寄付されるという仕組みを開発。
ネオナチたちが歩くほど、自分たちのクビを絞めることになる面白いマーチング。この5月、私の参加したNew York Festivalsの審査でも話題になったのだけれど、エージェンシーは相当な覚悟でこれに取り組み、ドイツの広告業界はみなbrave and cool!と讃えたそうです。これもブランデッド部門ゴールド。
課題その5:Obamaです。いえ健康保険です。Obamaといえば、今でこそ同性婚を法的に認めされた功績で讃えられていますが、本当は健康保険に注目すべきかな、と。まずBetween Two Ferns With Zach Galifianakis: President Barack Obama/White House をご覧ください。 ”Between Two Ferns”はタイトルにもあるように、2鉢のシダ(fern)の間でモデレーターZachがゲストに対し毒ある質問を繰り返す暴走トーク番組。以前ブラッドピットを怒らせてしまった回を見た事があって「エグいなあ。さすがアメリカだなあ」と驚嘆したのを覚えているが、まさかObamaの回があったとは。Zachが「最後の黒人大統領になるってどんな気分?」といった毒ある質問を続けても続けても、ヒラヒラと交わし続けるObamaはクールだなあと思ってました。ところが途中Obamaが番組おなじみの 赤ボタンを押すと、背景が変わり実は撮影場所がホワイトハウスだったことがわかってビックリ。内情を披露すると、若者たちに健康保険に入ってもらうために、若者に人気のこの毒番組にホワイトハウス側がアプローチ、実現したもの。つまりこの回は大いなる、かつ意義あるヤラセだったわけですね。いやあクライアントとしてフィルム部門へのエントリーを許可したホワイトハウスも度胸あるし、ゴールドを与えた審査員も凄いなあ。
何やらCNNのニュースを解説する怪しいアメリカ人のコラムみたいになってしまいましたが、カンヌの話ですよ。それほどカンヌは変わってしまったのです。でもって、肝心の表現はどこに行くのか。この項(たぶん)続く。
30秒から6分程度の映像に、課題とその解決方法のひとつがきちんと描かれている。賛否はおいといて、気になったものを紹介します。
課題その2:テロ。覚えているだろうか、今年1月に起きた を。風刺漫画誌の編集部を襲ったあの事件に抗議して、多くの漫画家が立ち上がった。絵で描くと何が起きるかわからない。だから自分たちが描きたい絵の内容を、音声で淡々と描写するキャンペーン はフィルム部門シルバーを受賞。他にDubus, Quirit2人が語る作品が入賞している。3人のうちKanarとQuiritがPentelのマーカーで描いていると言う。「私もコピー書く時は同じPentel使ってますっ」と心の中でツッコミを入れながら涙がじわり。「二度とやらない。僕たちはこれからも書き続ける」のコピーで不覚にも涙腺崩壊しました。スタジオでラジオ音声を録音している抑えた演出が、いい。こういう重たいエントリーが出てくるとは、私がフィルムを審査した2007年にはこれっぽちも思わなかった。
課題その3:銃。調査によれば、アメリカ人の60%強は銃を持っている方が安全だと思っている。NYにオープンしたGun Shopに若者たちが入っていき、銃を手に取る。「護身のために欲しくて」「それは5歳の子が両親を射殺したやつ」と店員。「マジ?」そんな会話が繰り広げられるThe Gun Shop/States United to Prevent Gun Violence。そう。この店ではアメリカを騒がせた惨劇に実際使われた銃を販売するのです。過去フィルム部門で銃愛好団体に異論を唱えるCMは幾つかあったが、やはりこういう体験型の方が効果があるのでしょうね。来店した客の80%が購入を思いとどまったらしい(はてさて残りの20%はどうなの?)。ブランデッド•コンテント部門のゴールド受賞。
課題その4:ナチス。アンタッチャブルと思われていた領域にエージェンシーが踏み込みました。 Nazis Against Nazis/Zdk Gesellschaft Demokratische Kultur 。ドイツのとある街はこの25年間、ネオナチが毎年集まって行進するイベントに悩んでいました。止めたい、でも止められない。解決策。彼らが1m歩くたびに10ユーロが、ナチスの行動を阻止する団体に寄付されるという仕組みを開発。
ネオナチたちが歩くほど、自分たちのクビを絞めることになる面白いマーチング。この5月、私の参加したNew York Festivalsの審査でも話題になったのだけれど、エージェンシーは相当な覚悟でこれに取り組み、ドイツの広告業界はみなbrave and cool!と讃えたそうです。これもブランデッド部門ゴールド。
課題その5:Obamaです。いえ健康保険です。Obamaといえば、今でこそ同性婚を法的に認めされた功績で讃えられていますが、本当は健康保険に注目すべきかな、と。まずBetween Two Ferns With Zach Galifianakis: President Barack Obama/White House をご覧ください。 ”Between Two Ferns”はタイトルにもあるように、2鉢のシダ(fern)の間でモデレーターZachがゲストに対し毒ある質問を繰り返す暴走トーク番組。以前ブラッドピットを怒らせてしまった回を見た事があって「エグいなあ。さすがアメリカだなあ」と驚嘆したのを覚えているが、まさかObamaの回があったとは。Zachが「最後の黒人大統領になるってどんな気分?」といった毒ある質問を続けても続けても、ヒラヒラと交わし続けるObamaはクールだなあと思ってました。ところが途中Obamaが番組おなじみの 赤ボタンを押すと、背景が変わり実は撮影場所がホワイトハウスだったことがわかってビックリ。内情を披露すると、若者たちに健康保険に入ってもらうために、若者に人気のこの毒番組にホワイトハウス側がアプローチ、実現したもの。つまりこの回は大いなる、かつ意義あるヤラセだったわけですね。いやあクライアントとしてフィルム部門へのエントリーを許可したホワイトハウスも度胸あるし、ゴールドを与えた審査員も凄いなあ。
何やらCNNのニュースを解説する怪しいアメリカ人のコラムみたいになってしまいましたが、カンヌの話ですよ。それほどカンヌは変わってしまったのです。でもって、肝心の表現はどこに行くのか。この項(たぶん)続く。