2015年07月

 青やオレンジの絵の具にまみれたスニーカーを洗う日曜日。歯ブラシでゴシゴシやっても取れないので洗濯機に放り込んでみました。ググったらそうお達しが。ちょっぴり罪の意識のようなものもありつつ、白く戻るかどうか待っております。靴

 さて。スニーカーが見事にカラフルになってしまった原因は先週の社員旅行。"Colour your Life"のテーマのもと、ダナンという街のビーチ付きリゾートで、いい大人が戦った結果なのです。
 戦うってどういうこと?と思うでしょ。社員を3チームに分けて、手のひらでババンと鮮やかに彩色したカラフルなTシャツを全員着用し、ビーチで運動会のようなものを実施しました。
 
 大事なことをひとつ。社員旅行のことをベトナムではTeam Building Trip と言います。Company Trip ではないのだな。チームワークをつくりあげるために共同作業をし、親睦を深める数日間。他社の人にも聞いてみたら、やはり趣向を凝らしてゲームをやったりするらしい。お揃いのTシャツを着て何かするというのは共通のよう。座学などは一切なし。そういえば弊社も去年は山でサバゲーをやったっけ。ケガ人も出ました。マジで。それほどみんな真剣に遊び、戦います。ことし私の腕と足も青あざだらけになってました。やれやれ。
 
 そもそもベトナムの大人には、社員旅行がとても大事。年に一度のこれがあるかないかが一流の会社かどうかを意味するらしい。ベトナムの奥様たちは「オタクの旦那の会社の社員旅行はどこなの?」という会話をよく交わすほど。勢いのいい会社だと、家族同伴もOKなんだとか。
 総勢20人から100人ほどのグループを数日間率いるには、プロの手を借ります。日本でいうJTBやHISのような会社が全員の引率だけでなく、数日間のゲームの仕切りや観光案内、夜の宴会のMC、記録映像の撮影等ありとあらゆる側面を旅行代理店社員3人くらいで頑張るのです。某代理店のトンさんが弊社の旅行は3年連続で仕切ってくれてます。私には2年連続になるトンさん、嬉しいことに名前を覚えてくれてました。日本人の名前は珍しいから覚えやすいんだそうな。
 トンさんが初日の朝、社員旅行客で溢れる早朝の空港で他のグループを引率している人に話しかけていました。そのグループは全員黄色いキャップをかぶっていたので、他社企画の旅。聞いてみたところ、元トンさんの下にいた人が独立してTeam Building Trip専門の会社を立ち上げたとか。ベトナムにおける社員旅行は、国レベルで見ても一大マーケットなので、バンバン小さなエージェンシーが立ち上がっています。ググったらその数にビビった。
 
 団体旅行といえば思い出すのは中学校や高校の修学旅行。ドライブインでの食事あり、大部屋の夜に布団をかぶって怖い話、恋の話あり、先生が寝静まった頃男子が女子を呼び出して告白あり、お土産屋さんで”友情”とか書かれたペナント(ある一定の世代以上しかわからんだろうな)をふざけて買う生徒あり。甘酸っぱいなにかがこみ上げてきます。この修学旅行がベトナムにはないらしい。ローカル社員に聞いてみたところ、学校で旅行に行くなんて、とんでもない。学校は勉学の場所。とにかく勉強。事故が起きたらどうするのか。たぶん先生は逃げちゃうと思う。だから社員旅行が、青春(といってもほとんどが家族持ちなんだが)の延長になると。そういえば、女子社員は3日間の旅行で何度も着替えてたなあ。「masako san。なんで、そんなに荷物少ないのか」と何度も聞かれました。ああ、女子度低くてすみません。
 写真は夜の浜飲み。BeachDrink

珍しく男子社員が仕切ってます。ウオッカの一気のみが続き、私は数人分の女子の分を引き受けました。酒のつまみは胡椒の粒が丸ごと入ったベトナム版スペシャルソーセージでした。大人の旨味。でもまだ生息している青春。

 
 
 

 「あなたはベトナム航空初のエアバス社最新型旅客機A350の試乗客に選ばれました。つきましてはーーー」なるメールをもらったのは6月半ば。どうやらフリクエントフライヤーの中からランダムに選んだらしい。

 そんなわけで7月3日に試乗して参りました。ホーチミン空港の搭乗ゲート周辺は、もう鉄ちゃんならぬ飛行機マニアがいっぱい。CanonやNikonの一眼レフを抱える男女(そう女の人も結構いる)がシャッターを押しまくっています。機内に入ると搭乗客はスマホでパチパチ。この日のFAは、超美人ぞろい。ベトナムの女優みたいで日頃見かける人たちより背も高い。いったい今までどこに隠れていたんですか!とツッコミたくなるほど。黄色(ビジネス対応)とグリーン(エコノミー対応)の新しいアオザイに身をつつみ、綺麗な声でご挨拶なさいます。むかし私はタイ国際航空の広告を7年ほどつくっていましたが、その時も撮影になるとスーパー美人FAが出て来たっけ。撮影専用スーパーFA。アジアはどこも同じなのでしょうか。乗客も彼女達と記念撮影したり、座席や天井を写したりで結局離陸が50分遅れました。はー
 
 さて。水平飛行に移行したとたんに食事の準備です。航路はドル箱路線のホーチミンーハノイ。わずか2時間でも、ベトナム航空では、ポーク&焼きそばだったりシーフード&ご飯、早い時間だと美味しいサンドイッチなどが提供されます。この日はイベントなので普段よりちょっと豪華。メインは魚の練り物とエビをレモングラスに巻いたものでした。意外とイケます。
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左下に見えるのは、鰹とハマチ(たぶん)を使ったベトナム風味カルパッチョ、添えものの黒いのはなんと本物のキャビアでした。保証書がついてた。旨い。思わずシャルドネ持って来てくださいと言いそうになりました。ベトナムでは滅多にお目にかかれないライ麦パンも。A350の文字が書かれた濃厚なベークドチーズケーキにベトナムの本気度を感じたなあ。エコノミーなのにワインまでいただきました。一つだけ難を言わせてもらうと、スーパーFAは撮影専門で給仕に慣れていないらしく、乗客に食事を出すのに時間がかかりましたね。トレイを片付け終わるのと着陸がほぼ一緒。途中、プロのカルテットがクラシックを演奏するイベントが開かれましたが、片付けをする通路のFAにさえぎられ座席からよく見えないという顛末でございました。まあ彼女達のご尊顔はじっくり眺めさせていただきましたが。座席は、横幅がちょっぴり広くなったと思いました。あと個人テレビの液晶モニターが大きくて見やすい。

 エアバスといえば、数年前にシンガポール航空とタイ国際航空がビジネスとファーストが広い二階建て旅客機A380を導入したので話題になりましたが、それ以外のアジアでは大抵の国がアメリカの経済支配下にあった歴史からボーイングを使いつづけています。つまりB747とかB777がおなじみかと。そんなわけでベトナム航空はカタール航空に次いで世界で2社目、アジアでは初めて最新型A350XMBを採用する会社になりました。 一機3億4000万USD。これが高いのか安いのか私には見当がつかないけれど、必要燃料の25%、排出二酸化炭素の25%は削減できると。原油高のこれからを考えると、悪い買い物ではないのかもしれません。

 A350を10機購入すると聞いた翌々日に、ベトナム航空にまた新しいニュースが。 ボーイングからB787(そう。天井の色が変わり、トイレが綺麗なドリームライナー)とB777をあわせて16機購入するそうです。ベトナム航空、意外とお金持ちなんだなあ。それよりも一つの会社がボーイングとエアバスを両方所有するって普通のことなんですかね?パイロットも、両方操縦できるわけじゃないし。確か今のJALが所有する機材はほぼボーイングで、中型機でよくプライベートジェットに使われるブラジル製のエンブラエルがあったくらいかと記憶しているのですが。詳しい方いらっしゃったら教えてください。あ、念のため。私は飛行機オタクではありません。ただこどもの頃からたまたま飛行機に乗る機会が多かったのでどうでもいいウンチクは語れるかもしれません。あまり役には立っていませんが(笑)。

 感想。ホーチミンーハノイという私が一番お世話になっているルートにA350が飛んでくれるなら、数千円足してでもビジネスに乗ろうと思いました。国際線と同じ、個人ボックス型フルフラット。ワインも出してくれるからなあ。往復4時間で日帰り出張の時は悪くないと思いました。これからはそれだ!写真はビジネスクラスと銀座のママっぽい美人CA。

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 世界の課題発表会と化したカンヌであるが、攻めるクライアントもあることを記しておかねば。これはとっても素敵なことであります。

   その1:じわじわ攻めるVolvo。

 2014年度カンヌのサイバーとフィルム部門のグランプリをはじめ、D&AD(Black Pencil), One Show, New York Festivals(ともにBest of Show)を受賞したVolvo TruckのThe Epic Sprit(懐かしい!)は、大いなる実証広告 だったと言える。今年もVolvoはがんばった。しかし受賞形態が異なることに注目したい。

 デザイン部門で Lifepaint/Volvo UK がグランプリを獲得したのは、予想外の流れだったろう。イギリスでは年間19000人もの自転車愛好者が死傷事故に巻き込まれる。特に自転車通勤者が、夜、事故に遭う事が多いため、Volvoはクルマのヘッドライトを浴びると反射して光る粒子の出るスプレーを開発。自動車会社の社会的責任という見地もさながら、エントリー映像がよくできている。coolに見えるよう、粒子をにんげんと自転車の効果的な箇所だけに吹き付けて闇の中の白を強調。Volvo-Reflective-LifePaint-01
アートディレクションを効かせている点に勝ち目があった。もちろんプロダクトとしてのデザインも素敵です。なおこの作品、プロモ部門グランプリ(!)も受賞している。クルマの売れ行きには関係ないよねーと眺めてみたムービーによれば、 "30秒に1本オンラインで売れた。自転車業界の活性化に役立った”んだそうです。

 ダイレクト部門グランプリもVolvoである。Interception/Volvo は、マーケットがアメリカという”地の不利”を逆手にとった企画。スウェーデン製のクルマが、アメリカ最大の行事SuperBowlに巨額の広告費用をかけるレクサスやGM、フォードなどのブランド車に勝てるはずがない。そこでVolvoは各車CMのオンエア時間に、#volvointerceptionと誰にクルマをあげたいかを書いてTweetしたら、Volvoの実車が当たるというキャンペーンを実施。1分あたり平均2000ツイートをゲット。アメフトのゲームのように、他社のCMをIntercept(阻止)したのである。なんでこれがダイレクト部門なのかなあと一瞬思ったりしたが、有名なDunking in the Dark/Oreoも2013年ダイレクトのシルバーだったからまあそういうものか、と。消費者側から動く逆ダイレクトメールと思えばわかりやすいですね。

 Volvo USAからもう一つ。またも自虐ネタなんですが、意外と私好きかも、ってやつを。The Volvo Hijacking Car Service/Volvo USA 。アメリカでは高級車といえばBMW, audi,メルセデスが想定され、Volvoを考える人はほぼいない。そこでBMWなどの購入を考えディーラーに行く人たちの送迎を、VolvoがまたもIntercept。ネットでたとえばaudiの試乗と入力すると偽の予約サイトに誘導される。買おうと思っているディーラーへの無料送迎を、Volvoを運転することで実体験してもらうのだ。デザイン、新しい安全装置類、オーディオの性能のよさを敵地に着くまでの間に実感させ選択肢のひとつにさせる。なるほどタイトルはHijackになってますなー
 上記2つのキャンペーンに見られるVolvo USAの、他人のふんどしで相撲を取らんとするスタンスは新鮮に見えました。

 そんなわけでVolvoはたった2年で、世界の広告賞総なめをした素敵なブランドになってしまったわけです。少なくとも広告賞審査員の間では。
 面白いのはそのアプローチの仕方。実はThe Epic Spritは、Volvo Truckの性能を示すLive Test キャンペーンの一つでしかない。私は去年3つの審査会場で、ハムスターがハンドルをころころ転がしてトラックを運転する篇とか、揺れのない走行を示すために地面に出た設計者の頭の上をトラックが運行する篇とか、社長が丈夫なフックに空中吊りされたトラックに乗っかってしゃべり続ける篇とか、ジャンクロードバンダムの股裂きと一緒にVolvo Truckのムービーを何度も見た。でも飽きないんですよねー、Real Mad Menの時代にアメリカ広告界を魅了した凍らないカーオイルのCMとか、身近な例でいうとゾウが踏んでも壊れないアーム筆入れ(古くてごめんなさい)のCMを見た時のドキドキ感です。アイデアのある性能実証広告は、いちばん強いのかもしれない。
 そして今年は交通安全に取り組むVolvo、WEBしかもソーシャルメディアにも強いVolvoというイメージを構築しつつある。たった2年ですよ。フォルクスワーゲンがこの20年くらいかけて地道にやってきたことを短期で成し遂げるこのドライブ感はなんですかね。代理店もがんばっているけれど、きっとクライアント側にとても頭のいい、決断の早い人がいるんだろうなあと、勝手に思いを巡らせている私であります。
 おっと、Samsungを書く時間がなくなっちまいました。この項(たぶん)つづく。

  

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