この3週間ほどホーチミンに滞在した人は面白いものを見たのではないだろうか。市内のありとあらゆる広告看板が政府、いや共産党からのお達し、いわゆるプロバガンダに変わってしまったのである。
 ことし2015年は、4月30日が南部独立40周年、9月2日が建国記念日(ただしこっちは毎年祝う)と国の骨幹に関わる記念日がつづき、街の看板がプロパガンダに変わるのを見てきたのだが、今回は規模が違った。
 たとえばあなたがホーチミンのタンソンニャット空港に着く。預けた荷物をピックアップするターンテーブルから、タクシー待ち場所にはりめぐされる柱巻き看板、空港出口の巨大看板、幹線道路沿いにあるコカコーラがほぼ年間契約している LED看板、バス停の看板===普段はコーヒー豆、砂糖入り緑茶、毛生えサプリ、精力剤系サプリ(これをホーチミンでは意外に見る)、シャンプー、頑固な汚れを落とす洗剤など===あなたがホテルに着くまでの広告看板が、すべて党大会の告知に変わった。
 ご存知のようにベトナムは、経済こそ資本主義をとりいれるというドイモイ(改革の意味)制度をとっているが、国家システムは共産党一党支配。
  看板の内容は2種類。2015-2020年の5カ年計画をたてる第10回ホーチミン市共産党委員会大会(写真参照)と、 第12回全国共産党大会の告知である。
党大会3

後者には経済発展のために社会一段となって頑張ろう、的なメッセージが書いてありました。ふだんの看板をみて市民が消費財を買うのと、頑張ろう!メッセージのどちらが国の経済に貢献するかはわからないけれど。
 
 プロパガンダは 10数種類あって色調はどれも、赤しかも金赤。広告用語ですみません。いわゆる血の赤に黄みをたした感じで鮮やかに見える色です。ちなみに社会主義、共産主義国家の旗色はどれも赤ですね。これは肌の色が違っても血の色は同じ、という理由から。私の目にはロシアと中国の赤は、ベトナム国旗の赤より濃く見える。どうでもいいですね。
 
 写真はホーチミンでも広告一等地であるサイゴン川沿いの看板。見事に赤プロパガンダなのがご覧いただけるだろうか。普段はハイネケンの緑の広告なんですけどね。
川看板
なお数週間スペースを占領されたからといって、広告主への補償は一切なし。これは中国も同じでした。
 
 街じゅうプロパガンダ。ガイジンの私の目にはアートとして新鮮にうつるが、ベトナム人たちにはどう見えているのだろう。オフィスビルのエレベーター内に設置されたLEDスクリーンにうつるプロパガンダ(弊社のあるビルはひとつのエレベーターにLEDが4機がついている。東京の山手線に乗っているときより広告に洗脳されている感は半端ない)を眺めながら、まだ23歳の弊社女子社員に聞いてみた。「うーん、私には関係ない。 いつもみたいにFrench Connectionとかファッションの広告見てる方がいい。それとね、あまり党のことについて、家の外じゃ話してはいけないとおばあちゃんに言われてる」
 いろいろ考えてしまう。私のベトナム経験値はまだまだだなあ。