2015年11月

 ホーチミンには季節が2つある。雨季と乾季だ。同じベトナムでも北に位置するハノイには、かろうじて四季があるが、ここは一年中暑いなか、湿り気があるか、ないか。

 11月第2週あたりから毎日のスコールが止まった。夜も気温がなかなか下がらない。市場に並ぶ青っぽかったトマトも、ようやく赤に戻った。そして私は3日に一回眉毛(&ときどき鼻毛)をカットしなければならなくなった。私的には乾季到来のサインだ。

 なぜ私の眉毛が伸びると、乾季なのかを説明しよう(大げさだな)。それにはもう一つの登場人物のことも説明しないといけない。クルマとバイクである。

 ホーチミンでは
今年1−10月で41,774台のクルマが新規登録された(ベトナム紙トイチェtuoi tre調べ1日あたり平均139台の増加。去年が1日100台であることを考えると飛躍的な伸びだ。ちなみにバイクも合わせると、1日900台の登録である。

 クルマとバイクが増える→渋滞発生→アイドリングする→空気中に窒素酸化物NOxと粒子状物質(いわゆるPMね)が飛ぶ→毎日雨が降る雨季だと、空気の汚れもいったん洗い流される→乾季になると容赦なく
飛びまくる物質から防御するために、私の眉毛と鼻毛は伸びる速度が速くなる。

 ってなわけだ。ホーチミンにいらした方はご存知だろうが、毎日バイクで通勤する人たちがかけている布製マスクの柄のカラフルなこと。あれはファッションではなく、空気汚染からの防御なのですよ。気合の入った御仁だと二重にかけるらしい。

 少し前に、宮川大輔さんとケンドーコバヤシさんがお笑い行脚公演「あんぎゃー」のためホーチミンにいらしたが、宮川さんはお土産にこのマスクを沢山購入されたそうな。目の付け所がさすがです(たぶん日本で柄のことをネタにしていると確信しているが)。

 3日に一度眉をいじるなんて色気づいたヤンキーの中学生みたいだが、見苦しくなく生きてゆくにはしょうがない。

         
BMWi8

 写真は、某ホテル前に泊まっていたBMW i8。 BMW 発プラグインハイブリッドのスポーツカーである。ホーチミンに増えるクルマは、このタイプにしてほしいわと私の眉が申しております。
  

 
  

 いやぁ、行ってきました。007 "SPECTRE"。ホーチミンのお洒落劇場で、初日に。面白かった。この映画なら5000円払ってもいい。そう思いました。

 オープニングはメキシコの「死者の日 Día de Muertos」というお祭り。ちょっとグロくて地味に派手な映像から 仮面をかぶったBondが女性にラテン女性にキスして絡んで走って走って銃撃って建物が崩れ落ちる( ネタバレすんません)まで7分程度を1カメの長回し(カットなしの映像のことです)でぐいぐい見せる。スタッフ大変だっただろうなあと左脳でしみじみしながら、右脳的にはもうテンション上がりっぱなしです。

 書きたいことは山ほどあるんだけど、泣き泣きポイントを一つに絞ります。
 オンナ。ダブルボンドガールですよ。

 007シリーズだと普段は Bondしか見えてない私ですが、今回は私の大好きなモニカ・ベルッチが出ている。ハリウッドに住むことを拒否し続けたイタリアの妖艶な女優。51歳の最高齢ということで「Bond girlというよりBond Womanと呼んで欲しいわ」のコメントがイギリスのインテリ向け新聞the guardianで話題でした。モニカの登場は喪服姿の横立ちから。これが凛としているのに艶っぽい。ペプラムの喪服とハイヒールが素敵で、もしここにオンラインショッピングのサイト示されたら値段に関わらず即買いだと思ったほど。

     monica-bellucci-3-xlarge
 あ、話、逸れちゃいました?失礼しました。顔や背中のどアップは若干キツいかなあと感じたけど、十分色気がある。Bondが彼女の服をストンと下ろした。いよいよ♡、と思ったらシーンはもう別の国に変わってました。

 モニカのアップがどうのこうのとかいうのでなく、この展開はベトナムだから。ベトナムだと濃厚なキスシーンやベッドシーンは検閲でざっくりカットされるのです。ご存知の通り007シリーズは、毎回お約束でベッドシーンが出てきます。伝統芸。2分程度。前後のアクションとつれないそぶりとベッドルームの2分でボンドガールたちはハリウッドをのし上がっていくわけです。その2分が、ない。なんだかねー。
 
 余談ですが、今年のはじめ "Fifty Shades of Grey" という女性向けエロ映画ありましたね。これを弊社のベトナム人スタッフが 「Masako-san、 洋服を脱ぎかけて、また着だしてワイン飲んでまだ脱ぎかけて次は車運転してて、なんか1時間で終わっちゃってよくわからなかったー」と不満そうに言ってきたのを思い出しました。それに比べたら軽傷か。
 
 儲け物だと思ったのは、もう一人のボンドガールのレア・セドウ。フランス語を綺麗に話すなあと思ったらフランス人でした。この映画では悪者の娘でお医者さん役。賢そうだけど、ちょっとふっくらした、どちらかというともっさりした女性として登場します。"Lost in Translation" で、主演だったスカーレット・ヨハンソンを初めて見たときと同じ印象ですわ、私的には。あの映画から13年、今じゃスカーレットは世界で最もセクシーな女優の一人として扱われるようになった。

                  007
        (右の女性です。なぜか女性トイレの入り口に看板があるのも、ベトナムならでは)
 
 このレア・セドウが L 'American (直訳だとアメリカ人ね。でも話の鍵なので詳細は映画で)の謎を追って悪者たちと戦い、Bondと逃げるうちに恋に落ち、そして徐々に色気を醸し出していく。まるで赤ワインが熟していくかのようです。Bondまでが、今までの外見や肉体優先的な恋でなく、精神的に恋におちてしまうのが今回のSPECTREの特徴と申しましょうか。ラスト10分間の彼女の素敵なことといったら。スカーレット・ヨハンソンが10年かけて成し遂げたことを、彼女はこの1本の1時間程度で成し遂げてしまった。案の定、重要な2分は、クライマックスの状況から見事にブツリとカットされてましたが。

 言い忘れました。監督は前回の "SKYFALL" に続きサム・メンデス。音楽や映像の美しさはもちろんなんだけど、やはり女性の撮り方が違うんだよなあ。だって"American Beauty" の監督ですよ。赤いバラの映像、今でも脳裏に描くことができる。10代の青っぽいSEXYさから、成熟した女性の崩れかけた色気まで、見事に撮りわける人。私生活でも、タイタニック女優ケイト・ウィンスレットの元旦那。なるほど、諸々うなずけます。
 
 失われた4分(2分x2人)を観たい。東南アジアだと、バンコクに行けばノーカット上映かなあ。東京は12月上映ですよね。待てない。悩ましい。
 
 もう一つ。ダニエル・クレイグは最初から最後まで、毛先から血管から頭蓋骨(観たらわかります)まで一分の隙なくカッコいいです。いろいろ書きましたが、私が一番観たいのは、ダニエルの4分かもしれない。




 ハロウィンですね。カボチャの季節ですね。
 東京にいたときは、カボチャが甘くコックリした味になってくると冬の到来を感じたもの。しょっちゅう煮物に使うから冬の味の常連でした。

 ベトナムにもカボチャはあります。中の色はオレンジなんだけど、ファンタみたいな透き通ったオレンジ。一年中ある。あっさりしていて冬瓜の延長みたいな感じ。カボチャは漢字で南瓜って書く意義(大げさだな)を、はじめて実感しました。で、常連からは外れた。
 
 東京での常備野菜は、キャベツ、ニンジン。ジャガイモ、玉ねぎ、小松菜、ほうれんそう、長ねぎ、薬味としてワケギ。秋冬になると、カボチャと蕪が加わってたな。
 それがホーチミンに暮らす今、どういう面々が冷蔵庫の常連かと申しますと、オクラ、いんげん、トマト、これ3強。続いてゴーヤ、空芯菜、小松菜...ニンジンとキャベツは3軍的存在になってしまいました。

 理由はひとえにお値段。安い。オクラなんか10本で 45円くらい(8000VND)。トマトなんて一つ15円くらい。形状はイタリア系タテ長の小さいトマトで、東京で買っていた5つ400円程度の桃太郎トマトと比べると甘みはないけれど、ささやかな旨みがあって子供のときに食べたトマトの味がします。たぶんこの表現、最初から桃太郎トマトの20代の人にはわからないよね。ごめんなさい。

 ベトナムでオクラは生のままでは食べません。東京で食べる(タイ産の)ものより長いし、若干太い、皮が厚い、産毛が太い、という形状のものをサッと茹でてからヘタと尻を切り落としてお手製ソースで食べます。お店で覚えたニョクマムベースの甘辛ソース、マヨネーズにチリソースを混ぜたピンクソース(普通のピンクソースはケチャップを混ぜますが、こちらは違う)など。あとは南部家庭の味噌汁的存在Canh chua(カンチュア)という野菜スープに刻んで入れる。がポピュラーな食べ方。

 うちではカンチュアは作らないけど、茹でてソースはお客様が来た時に手取り早いのでよくやります。でも2日に1度作ってるのは(作りすぎ?)、茹でたオクラをざく切りしたものに、ゴマ油とわさびと切り昆布で和えるというシンプルなメニュー。昆布は好きなのでいろいろ試してみましたが、会社同期の飯田氏(通称とんちん)のお店江戸一さんが出している「ぶぶ漬け昆布」を使うのが一番美味しいのでこれは贅沢品として週に一回程度。ふだんは「ふじっ子のおいしい塩こんぶ」を使っています。

 おっと主役に近い脇役を忘れてました。パクチー(香菜)、ミント、ディルも常備のお野菜。パクチーがあれば、なんでもベトナム・タイ風料理にアレンジできるし、ディルがあればなんちゃって南欧風サラダ、肉料理がいとも簡単にできるのです。ベトナムに来てから時間のかかる凝った料理は作らなくなったけれど、5分でできる酒の肴的レシピはかなり増えましたね。
 所変われば品変わる。果物については、近いうちに。

  
ゴーヤ

 写真はゴーヤ。日本より小さいし、苦くない。スライスしてドレッシングちゃちゃっとかけて生で食べるのが多いかな。写真の中が赤いのは、買ってから一週間ほうっておいたもの。こうなるんですねー

 

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