ホーチミンにゲストがきて、皆さんはじめに驚かれるのはお金だ。空港で3万円両替するとします。すると約5,000,000ベトナムドンを、100,000ドン(約600円)と50,000ドン(300円)という一番使われる紙幣でもらうので、ちょっとした札束になる。成金気分(笑)?これが円だったらいいのにと、私も思ってます。はい。

 市内で買い物をするとおつりで20,000、10,000、5,000、2,000、1,000ドン紙幣がたまっていきます。でも硬貨をもらうことは、ない。一部の旅行ガイドを見ると「ベトナムの通貨は紙幣のみ」と書いてあったり、硬貨の情報が書いてあっても写真は載っていないケースがほとんど。

 ところが私はついに硬貨にめぐりあう。過日とあるスーパーで買い物をして支払いの段になった。ああ、彼女がいる。”彼女”は、乳製品、豆腐系、肉、野菜などジャンルごと小袋にわけてくれる。しかも生理用品は外から見えない白い袋に入れるという日本品質的気遣いをしてくれる数少ないレジ係なので、見つけたら大抵彼女の列に並ぶことにしている。このスーパーにはもう一人特徴のあるレジ係がいるのだが、彼の話は今度。

 支払い総額241,220ドン。ベトナムでは1000ドン以下のおつりは大抵切り捨てで、そのかわり飴を一つか二つもらったりする。私は飴を食べないので、いつも手のひらを前にだして首を横に振って受け取らなかった(ベトナム語で No thank youが言えなかった)。ところがその日、彼女が"chi cho mot chut(ちょっと待って)"といってレジの隅っこをゴソゴソ。取り出した200ドンの硬貨を渡してくれた。ピカピカの200ドン。

  
200d


 嬉しくて”chi thich tien dong" と答えたら、はにかみながら彼女はクスクス笑ってくれた。ちなみに私は "私は硬貨が見たかったのだ” と言いたかったのだが初心者ボキャブラリーでは無理だったので、"私は硬貨が好き”と無理くりベトナム語で答えたわけ。この間抜けなレスが受けたのか。

 いつも頑として飴を受け取らない私に、彼女なりに申し訳ないと思っていたのかどうかはわからないけど、奇遇にも硬貨を手にできたことはちょっと嬉しい。2003年発行の硬貨。

 うちの運転手さんに聞いてみたら「Masako san、珍しい。僕が最後に硬貨を見たのは10年くらい前だ。その硬貨はスーパーでしか使えない。でも珍しい」とおっしゃってました。よっぽどレアなんだろう。調べてみました。流通しない理由その1。もう政府が発行していない。その2。ランソンという中越国境の町に住む中国人が、200ドン硬貨を1000ドン以上で買い集めて溶かしたニッケルを中国に売っている(これは噂)。

 聞くところによると、ハノイで硬貨を出すと罵倒されるとか。今度試してみようかな。でも、この硬貨は、手放したくないの。