今朝は友人の訃報をfacebookで知り、またたく間に目が覚めた。今週末は久々のオフで、日曜こそ惰眠をむさぼるぞと密かに(ちっちゃいねー)楽しみにしていたのだが、脳がいったん起きてしまったからには無理だなと諦めた朝7時。
 Peter FreedとJohn Mannというアメリカの脳科学博士の調査によると、人は悲しい写真や事件を体験すると、脳の70カ所以上が同時に反応する。特に知人の死を体験すると痛み、孤立、意思決定といったマイナスの現実だけでなく、その人と共有したプラスの記憶、感情もたくさん思い出されるものだから、脳の動きが複雑になるんだそうだ。
 面白いことに数年前に彼にフリーズしたMacを直してもらったことや、10年ほど前に彼の自宅で食事会をしたときの鍋の中身を、真っ先に思い出した。つい2週間前に友人がベトナムに行くのでよろしく、というメッセージをもらっていたっけと思い出したのは、ほんの1時間前。記憶はどういう風にひもとかれるのだろう。
 
 昨日は、私がベトナムに来てから一年とちょっと一緒に過ごしたエージェンシーTraffic Managerの女性(写真向かって右。)の送別会だった。新しい写真を撮りたかったが、iPhoneのストレージがいっぱいで取れなかった。雅子のバカ。
  
Hong Anh
 Trafficとは文字どおり交通整理。クリエーティブのスタッフの仕事状況とか、それぞれの仕事の流れを把握して、人をアサインしたり、競合前にスケジュールをたててくれる仕事。ベトナムの今の環境では、少人数で同時多数の仕事をこなさないといけないのと、それぞれスタッフの得手不得手ぶっちゃけ能力が異なるため、暖かい視線を持つ彼女のさりげないアドバイスは、とっても助けになった。彼女がいなかったら、私はやっていけなかっただろうと感謝している。
  私生活でもいろいろな会話をした。妊娠中のあれこれ(私は子供を産んだことはないが、友人たちのエピソードで知識豊富な耳年増。じっさい年増だが)や髪の毛が丈夫になるにはどうしたらいいかと聞かれ「わかめとひじきを食べた方がいい」と言ってマレーシアで仕入れたブツをあげたら「日本人はこんなに質素なものを食べるのか」と言われ、大笑い。彼女の旦那になる人がアメリカ在住アメリカ国籍のベトナム人で、自分もグリーンカードを申請してるんだけど待ちの状態がずっと続いている、どうしたら早く取れるかと聞かれた時はひとつ裏技を伝授したが、あまり役に立たず。決め手は、彼女が妊娠して旦那さんの子供を産んだことで、さらっとグリーンカードが取れた。アメリカ、かっこいいぞ!それで今回彼女はめでたく海を渡る。そして彼女はたくさんのHelloから新生活をはじめる。
 
 今年1月から2月にかけて、私の元にかなりの数のCV(履歴書)が送られてきた。楽に50はある。まだ見きれていない。なんでやねんと思っていたら、テト(ベトナムの旧正月)明けにはベトナム人の67.8%が退職、転職を希望すると書かれた記事に出くわした。なるほど。リセット志向、それとも冒険好き?というわけで、うちのエージェンシーからも優秀なスタッフが新天地を探して去って行く。
 
 冒頭に書いた彼は、PRESIDENTという雑誌を有名にし、数々の勉強会、組織の中心で人をうまく交流させる名人だった。これほど言葉で人をいい気持ちにさせることのできる人は、あまりいない。編集者のお手本のような人だった。ローマの塩野七生さんがこのニュースを知ったら、さぞ悲しまれることだろう。
 
 まだ気持ちをうまく整理できない。でも一つ言えることがあるとすれば、数々のHello, Goodbyeで世の中はできている。