2016年05月

 ヤァ!ヤァ!ヤァ!オバマ大統領がベトナムにやってきた。エアフォースワンから降りて、夜まっさきに向かった先がハノイのブンチャー屋さん。素敵だなあ、オバマ。ハノイの人の心、鷲掴みにしましたね。

 ブンチャー(Bun Cha)とは、ハノイが誇るローカルフードの一つ。フォー(Pho)ほど有名じゃあないけれど、ワタクシ個人的にはこちらの方が好きで、週に一回は食しております。ホーチミンにもお店がある。ブンチャーは一言でいうとベトナム風つけ麺。
 Bun Cha Masako
ゆでた米麺のブンをニョクマム(魚醤)ベースのタレにつけて、豚肉や葉っぱと一緒にいただく。この肉、バラ薄切りと豚のつくねを炭火で焼いたもので、意外といけます。チャーコールでじりじり炙った肉からでる汁が滋味を醸し出すのです。って、ブンチャーの話になると止まらなくって。すみません。

 CNNで見たベトナム特有のプラスチック椅子に座ってブンチャーを食べるオバマの姿が強烈すぎて、翌24日の昼、パブロフの犬状態の私はよく行くブンチャー専門店を訪ねました。そこで目に入ったものは、ベトナム人の行列。安くて人気のある店ではあるんだけれど、行列とはねー。たぶんこの日、ベトナム中のブンチャー屋さんは繁盛したはず。オバマ・エフェクトその1。

 ようやく席につけました。でもなかなか注文を取りにきてくれない。給仕が茶髪の女性二人だけでしかも動きが新人っぽい。人手が全く足りないもんだから、男性客数人が自発的にブンの入った皿を取りに行っては届けたり、お箸を洗ったりしている。私のところにも持ってきてくれました。ベトナム男性は働かないと言われますが、何かが起きると、さりげなく実に献身的に動きます。この”何かが起きると”が重要なんだけど。ともあれ、働くベトナム人男性。オバマ・エフェクトその2。

 いつもは冷房の効いている室内に案内されるが、その日は室内が異様に混み合っていたので、オープンエアの方に、って単に屋外(笑)のテーブルに座っておりました。10分くらい待った頃、急に突風が吹いた。午後1時過ぎ。ザーッと効果音まで聞こえましたよ。激しい風で、地面に落ちているゴミやストローがテープルに飛んでくるわ、葉っぱが一枚顔にあたって私は派手なクシャミをしでかすわ、道を歩く女子のスカートがめくれるわ(本当ですよ)、クライマックスは給仕の女子が数人分のブンと葉っぱの乗ったトレイをひっくり返しドンガラガッシャン。まあ賑やかなこと。弊社の社員も別の場所にいて突風にあったことをfacebookに挙げていた。某筋によるとちょうどその頃、オバマの乗った大統領専用機がホーチミンのタンソンニャット空港に到着していたらしい。嘘のようだが、風と共にオバマ。オバマ・エフェクトその3。

 オバマがホーチミンにいた2日間、弊社の社員もずっとオバマー、オバマー(なぜかベトナム人が発音するとマーと長くなる)と言っていた。かくいう私もとある仕事で、 オバマがブンチャーを食べているTシャツという企画を出したらスタッフの一人が「Masako-san,それはすでに市場にあるから実現可能だ」という。で、販売先のWebsiteを見てみたら、そのTシャツはすでにSold Outである。動きが早すぎるぜ、ベトナム。その時、別のスタッフが「Masako-san, オバマが使ったといってもっとブームになっているものがある。それはオケだ」という。え、オケ?BBC Vietnameseの映像の26”あたりをみて欲しい。魚に餌付けをする時の桶である。ベトナム女性の一部でカワイイと人気らしい。桶。オバマ・エフェクト4。
*元のBBC Vietnameseのfacebook投稿までたどり着くのが大変なので、誰かがYoutube に挙げたものを貼っておきます。元投稿はすでに340万viewで9100コメント付き。他のネタより多いです。
 
 オバマ大好きベトナム人。ホーチミンのあちこちにまだベトナム戦争時代の戦車や米軍の飛行機が見受けられるのに、なぜこんなに純粋に喜べるのかなと思ったが、訳もない。国民平均年齢が27歳。ハノイで、ホーチミンで目をキラキラさせながらスマホを掲げるほとんどの人たちは、ベトナム戦争を知らない世代だ。そしてベトナム人特有の、悪いことはなかったことにしようという視点。それがいい意味でも悪い意味でも機能しているのではないかと。

 まるで好感度アップするだけのために来たオバマのようだが、実はかなりのビジネスマンぶりを発揮している。ベトナムの格安航空ベトジェットは、ボーイング社とボーイングB737 100機の購入契約を締結。契約額は113億USD(約1兆2300億円)で、米越間の貿易に関する契約としては過去最高額である。締結にはオバマとチャン・ダイ・クアン国家主席が立ち会った。
Vietjetむべなるかな。オバマ・エフェクト5。(手前が有名なベトジェットの女性社長。立っているのはお偉いお二人。不思議な光景)
 
 その他にもいろいろな取引が成立したが、ここでは書かない。私は専門家ではないので。ただかなりの額とだけ記しておきます。気になる方はこれを読んでね。因みにこの先の取材はできなかったらしい。
 
 さて、オバマがブンチャーとビールを一緒に堪能したおじさんは、BourdainといってCNNにParts Unknownという旅番組を持っていて、旅好きの人にはそこそこ知られている。元はマンハッタンにあるBrasserie Les Halls というフレンチビストロのシェフ。2000年以前なら「意識してなかったけどこのレストラン行ったことあるかも!」という日本人は意外といると思う(私もその一人だ。笑)。ま、彼とオバマの食事風景と対談が、9月から始まるParts Unknown のSeason 8初回に使われるのだそうだ。どうりで周りの客が平静だったわけだ。CNNですら、オバマ・エフェクトを利用する。

 

 カンボジアのプノンペンを訪れた。ポルポト時代のキリングフィールド Killing Fieldについて知りたかったから。むかしアンコールワットを観光した際に4日間ドライバーをしてくれたハイという青年が、クメールルージュがいかに残虐だったか、でもクメールルージュのNO2が道路を舗装してくれたなどと合間あいまに話してくれたことが、能天気娘のどこかアタマの片隅に残っていたせいか。なにせホーチミンからプノンペンはカタール航空で40 分。近い近い。
 
 クメールルージュという名前だけ聞くと、CHANELから出る口紅の新色みたいで優しい印象を受けるがとんでもない。ちょっとだけおさらいすると、クメールルージュはカンボジア共産党の別名で、1975−79年の4年間に”完全な共産主義国”を建設するために猛威をふるい、大量の知識人ひいては国民の4分の1にあたる200万人を虐殺したグループのことだ。

 で、Killing Fieldに行ってみた。正式名チュンエク大量虐殺センター。一見のどかな野原をヘッドフォンをつけた外国人たちがのんびり歩いている。(ニワトリものんびり)
Killing Field
しかしヘッドフォンから聞こえるのは、淡々と語られる虐殺のプロセス。ポイントポイントで適切な解説が流れてくる。高度なドキュメンタリー。30代の初めにワシントンのホロコースト記念博物館に行ったとき、豊かな映像素材と写真がおりなす演出に圧倒された。たぶんそれと真逆の、引き算展示がKilling Field。むしろこちらの方が聞き手の想像力を刺激するのかもしれない。映画「Killing Field」を観たときと、全く違う印象。興味のある方はプノンペンを訪問することをおすすめする。

 クメールルージュ党首ポルポトが出した指令の中で一番印象に残ったのは、手のやわらかい人と眼鏡の人を殺せということ。手がやわらかい=労働者でない。眼鏡をかけている=勉強した知識階級である。知識階級は”古い人”であり、彼のめざす農業主体の共産主義国、自分に逆らわない新しい人でつくる国には邪魔だったということだ。学校、病院、工場を閉鎖。銀行業務どころか貨幣まで禁止してしまい、子どもたちに医者をさせたり農業をさせたりしたが、どっこいこれが機能するはずもなく、国自体が飢饉となり破綻の道をたどった。

 このポルポト、カンボジアの裕福な農家で9人兄弟の8番目として生まれた。20歳のときにフランス政府から奨学金をもらってパリに留学。電子工学を学んだものの、途中フランス共産党の集まりに顔を出すようになり共産主義思想に洗脳されていく。成績がいまひとつで3年で放校された。最終的には毛沢東を崇拝していたという。
 
 元インテリがどういう経緯で、失敗への道を邁進したのだろう。共産主義への批評はさておいて、ポルポトが尊敬する毛沢東はやはり偉業の人だと思うのだ。ポルポトの生き様をイマ風にたとえると、優秀な人を使うことのできないダメなリーダーの典型だったのかなあなどと思いを巡らせたりする。

 ちなみにポルポトの写真は以外と少ない。彼の下にいた虐殺センターの責任者カン・ケイウは意外とイケメンで写真をプノンペンのあちこちでみたのだけれど(まだ存命。35年の禁固刑を宣告されている)、potなぜかポルポトのは一つしかなかった。もしかしてポルポトは自分の外見にコンプレックスでも持っていたのだろうか。推測でしかないけど。Killing Fieldとペアで見るべきもう一つの施設トウールスレン虐殺博物館(通称S21)でポルポトを発見したが、銅像の頭部でしかも床に放置されていた



 
 


(カン・ケイウ)

    ポルポト
                      (放置されたポルポト)

 ホーチミンで通うジムに、ひとなつっこく話しかけてくる従業員がいる。私が機械をガチャンガチャンやっていると、側にやってきてソニーとサムソンのスマホはどちらがいいかとか、いかにホーチミンでプロテインが入手しにくいかなど東京の人のような話をするので、そういうクラスの人だと思っていた。先日「マダム、いつも運動しっぱなしでしょ。ストレッチをしないとダメですよ。僕がやってあげます」とマットを床にしいてストレッチしてくれた。それ自体はありがたかったのだが、彼の手、つまり手のひらまでもがガサガサだった。そういう手に触られたのは生まれて初めてだったので、正直驚いた。ごめん。ベトナムも奥が深い。


 いやはやプレミアリーグファンには、世の中に確実なことなどない!と断言できる一年でした。レスターが優勝するなんて。Chelseaサポーター歴の長い私ですが、去年の9月までLeicesterという単語を知らなくてイギリス人に「ここんところ勝ち続けているLeicesterって、どう発音するの?」と聞いておお、我らが岡崎選手の所属するレスターだと気がついたんですよ。ゴメンなさい、岡崎さん。
 
 5月3日早朝。Chelsea - Spursの試合を後半から観ました。Spursはこの試合に勝てば今シーズンの優勝も標的内なのでファウルも辞さない必死の攻めでしたが、Chelsea頑張った。レスターの監督ラニエリは元Chelseaの監督だったから、自分たちは勝てない今シーズン、どうせならSpursよりChelseaに勝たせてやろうぜ的マインドがChelsea選手にもサポーターにもにあったのかもしれませんね。不調と言われていたアザールのゴールが、レスターの優勝を決めたのもよかった。

 早朝からBBCそしてCNNまでもトップニュースが、Chelseaの単語から始まるレスターのミラクル優勝。画面タイトルにFOXESとあるのは、レスターのロゴキャラクターにあるキツネからの愛称です。
僧侶

 さて見出しにもあるように、なぜタイ人が喜ぶか。について考えてみました。 私、レスターというチームに関しては知らなかったけれど、KING POWERのユニフォームについては認識がありました。ChelseaやManchester City, Manchester Unitedの試合を観ていてその対戦相手が着ているユニについてるロゴとして認識していたというのが正しい記述かな。
th-2(写真は、岡崎が今年3月見事なオーバーヘットを決めた直後のもの)
このKING POWERは、タイ一の免税店を運営する会社です。バンコクのスワンナプーム空港を利用する方にはおなじみのブランドですな。因みに社長のヴィッチャイ氏はタイで4位のお金持ち(2016 Forbes調べ)。

 私の支持するChelseaもタイのSINGHA BEERがスポンサーの一つ。ロンドンのStamford Bridgeで観戦するときはいつも「なんで寒いロンドンまで来て、シンハビール飲まなくちゃいかんねん?」とブツブツ言いながら飲んでます。

 じつは元首相のタクシン氏も2007年にManchester Cityのオーナーになったことがあった。2006年9月の軍事クーデターで失脚したタクシン氏は、タイで圧倒的な人気を誇るプレミアリーグのクラブのオーナーとなることで、タイ国民への影響力を維持することを狙ったのです。残念ながらこのオーナーシップは1年で終わっちゃいましたが。

 タイにおいては、国内で何かをするよりプレミアリーグにお金をかける方が、よほどブランドイメージ管理に役立つということ。それほどタイ人はプレミアリーグを観ているということでもあります。テレビで取材を受けている僧侶まで、レスターの優勝を喜ぶなんてなんか面白いでしょ。エロやバイオレンスでは届かないところまでカバーできる
超優良コンテンツ。

 ちなみにKING POWERでお金を一番使っているのは、中国人(昔は日本人だったなあ。遠い目。この旧ロゴは見覚えありのかたも多いのでは?)。king-power-logo
中国人のお金がタイを経由してレスターをプレミアリーグを支えて、最後にタイ人がハッピーになるとは経済の皮肉、いえ素晴らしささえ感じます。

 釣りではなく、カバー写真は、大英帝国が誇る元イギリス代表ゲイリー・リネカー。若いころレスターでプレイしていました。昨年12月彼がBBCでコメンテーターを務める番組で 「もしレスターが優勝したら、来季の最初の番組にパンツ一丁で出演する」と言ったもんだから、このどこぞのコラ職人が手がけたビジュアルが今になってイギリスのSNS内で話題です。リネカーも彼自身のTwitterで後悔?してますね。いやあ、期待したい。
 
 レスター、世界中を沸かしてくれました。ありがとう。adidasじゃないけど、
Impossible is Nothing.


 

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