"Good Morning, Vietnam" を観た。20数年ぶりだ。私の中で、楽しい映画という記憶しかなかったのは、ロビンウイリアムズがマイクに向かって呼びかける "Gooooooood Morning, Viet Nam!" があまりに印象的で、その前後に出てくる人たちの笑顔で映画自体を覚えていたからなのだろう。
Robin

 あらためまして、これは反戦映画。数あるベトナム戦争ものと違って、虐殺や進駐中に狂っていく兵隊、女性をひどく扱う場面がないから、当時の私にはそう見えてなかっただけの話。

 ロビンウイリアムズ演じるDJクロンナウアが、着任早々アオザイ姿の女性の尻(映画では明らかにそう見える)を追っかけようと、金にものを言わせてベトナム人から自転車を買い取り街を疾走する場面がある。いわゆる”醜いアメリカ人”を描いているにもかかわらずここがお笑いに見えてしまったのは、同僚である黒人軍曹が同じ行動をするのだが、彼のタイヤにゴムの部分がなくて金属部分だけで自転車をセコセコ漕ぐというコミカル加減の影響が大きい。あくまで監督のバリーレビンソン(「レインマン」の監督でもある)は、普通の反戦映画にしたくなかったんだろうと勝手に想像します。

 DJクロンナウアは、兵隊たちを元気付けたい一心で、マシンガントークの合間にロックンロールの選曲をする。軍指定の推薦曲を無視するものだから上司から怒られてしまうわけですね。
 「じゃあ、どんな曲ならいいんですか」
 「パーシーフェイスオーケストラ(よくデパートとかでかかるアレです)、アンディウイリアムス、ペリーコモ、そしてフランクシナトラ卿だ(卿ですよ、卿)」
 「ボブディランは?」
 「ボブディランは論外だ」
という会話が交わされる。
 はじめてこの映画を観たときは、このやりとりに全く注目していなかった。というか意味も背景もわからないので、流してしまった。ところが今、このタイミングで見ると、ボブディランという単語に重みが出てくる。

 先月ボブディランがノーベル文学賞を受賞したとき、なにか小説でも書いたのかなと思い調べたところ、どうやら大昔に書いた歌詞に対して授与されたと知って驚いた。聞いたことのある歌といえば、Like a Rolling StoneとかBlowin' in the Wind(「風に吹かれて」)とか Knockin' on Heaven's Doorだけれど、歌詞をしげしげと眺めたのは初めて。アメリカ人小学生がわかる程度の英語なのに、奥が深くて、反戦メッセージが強かったことを知りました。多くのミュージシャンにカバーされたわけです。


21歳の時に書いたBlowin' in the Windから一部を書き出してみる。

   Yes, how many times must cannon balls fly 
   before forever they're banned 
  どれだけの砲弾が飛びかえば、永久に禁止になるんだろう
   
   Yes, how many times a man can turn his head
   and pretend well he just doesn't see
     どれだけ顔を背けるのだろう。そして見ないふりをするんだろう
   
   Yes, how many deaths will it take till he knows
   that too many people have died 
  どれだけ死ねばわかるのか。どれだけ多くの人が死んだのかと
   
   The answer my friend is blowin' in the wind
   The answer is blowin in the wind 
  その答えは、友よ、風に吹かれている
  答えは風に吹かれている       ©Bob Dylan/Blowin' in the wind

これは、歌の一部なんですが、いま見てもじわじわくる。いや、今だからじわじわくる。

余談ですがGood Morning, Vietnam、実はタイで撮影されたんですと。いま住むベトナムは左ハンドルなのに、映画では車が右ハンドルで出てくる。調べたら、撮影地はタイでした。

GoodMorningVietnam


昔ちっともわかってなかったことがわかる時、年を重ねるのも悪くないなと思います。いや、マジで。

ところでボブディラン、本当にノーベル賞授賞式に行くのかな。