2018年06月

負けたけど結果はついてきた。次はFIFAランキング3位で優勝候補の一角、ベルギーと対戦。凄いことです。

6月28日 負けるが勝ちを選択できるリーダー
日本ーポーランド 0−1

 後半37分武藤に変えて長谷部を投入したとき、西野監督の博打を見た。ケイスケホンダじゃないんだ...セネガルーコロンビアが0−1になり、そのままならフェアプレイポイントで優位の日本が2位で逃げきれる。だから自力じゃ何もしない方向で行くのか。ほほう。

 西野監督は普段から’アグレッシブ’に攻めるを選手に繰り返し伝えていた。この日もハーフタイムのロッカールームでは「守りきる頭はおいて行ってくれ。アグレッシブに行って欲しい」と指示。その後コロンビアの動きを知っての180度軌道修正。だから優秀な伝書鳩、長谷部を入れる。「このままでいい。無駄に動いてイエローを取られるな(実際血気盛んな槙野が危なかった)。4−1−4ー1のディフェンシブなままで」監督の指示は見事に伝わり、モニターの前の私たちは世にも退屈なパス回しを見せられ、フィールドの選手たちは怒涛のブーイングにさらされる。

 他力本願。’アグレッシブ西野’にはしんどい選択だったろう。しかし結果のためなら、個人の信条なんて捨てて戦術を変える。1994年のドーハの悲劇(3分のロスタイムを流せば勝てたのに最後無駄に攻めて相手に同点弾を決められW杯に出られなかった)を見て、1996年マイアミ五輪(ブラジルに勝利したマイアミの奇跡。2勝したにも関わらず得失点差でグループリーグ通過できず)を自ら経験したアグレッシブ西野ならではの決断。長年後悔し続けた失敗から導かれた、瞬時の選択。
1996チームJPG
     1996五輪チーム。城、伊東、西野監督、松田、川口。©️週刊ポスト
前園西野
      キャプテン前園と伊藤英明(西野監督) ©︎Jリーグ

 コロンビア戦、セネガル戦でミスをした川島を起用するだけでなく、彼にキャプテンマークをつけさせたのも英断だ。日本中の「川島を変えろ!」というブーイングを背中に、俺はお前を信頼しているというメッセージを送る。

 ラスト10分のパス回しは、ユーロやW杯ではよくあることだ。勝つためならアリ。この試合は負けても次のステージに上がれるなら、それもアリ。面白いことに、ゲーム直後複雑な気持ちだった私にイギリスやアルゼンチンの友人から ”Well done, Japan" とメッセージが相次いだ。面白い。強豪国に認めてもらった瞬間。仲間入りとはまだまだおこがましくて言えないけれど、こういう経験を経て日本はNext stage へ進むことができる。
      
 そういえばアグレッシブ西野、今回6人先発を変えて主力を温存している。この博打が次のベルギー戦でも機能するといいなあ。

6月27日 アップデートできなかったドイツ
韓国ードイツ 2−0

 「僕たちはコミットできていなかった。もし仮にこのゲームを勝てたとしても、次のゲームで負けていたと思う。ここで僕たちが落ちたのはもっともだ。今大会どのゲームも納得できなかった。全くドイツじゃない。みんなわかっていた。悲愴なことに」
 
 試合後、キーパーのノイアーの言葉が全てを語っていた。ドイツは初戦、メキシコに負けている。W杯開始前も国際試合は5戦0勝(3分2敗)。全員が流れに乗れないまま足を踏み入れてしまったW杯だった。2戦目のスウエーデン戦も全体のできは今一つでクロース個人の執念で薄氷を踏んで勝ったようなもの。
悲しみのエジル
                  哀しみのエジル。CDジャケットみたいだ

 何が優勝した2014年と違ったのだろう。まず司令塔エジルが目立たなかった。第二に決定力をクロースに頼りすぎた。2014年のレーブ率いるドイツは、当時35歳のクローゼ筆頭にポドルスキ(30)、シュバインシュタイガー(29)、ケディラ(27)ミュラー(24)クロース(24)、ゲッツェ(22)とストライカーに飢えがあって常に点取り競争していた。

 覚えているだろうか、ゲッツェは前回優勝弾を決めた選手。なのに今回は代表入りしていない。観客席で試合を見守っていた元エース、クローゼの表情が切ない。鷲の急襲のようにガンガン攻めるドイツを見たかった。
チョヒョヌのセーブ
    チョヒョヌ、ゴメスのヘディングを見事に止める

 それにしても韓国のキーパー、チョヒョヌはよく守った。K-POPシンガーのような風貌。彼でなかったら、ドイツは最低2点取れていたかもしれない。
MOM チョヒョヌ
     Man of the Match チョヒョヌ

 ●”前回優勝したチームは次回予選リーグ敗退”のジンクスを守った4番目の国(2002フランス、2010イタリア、2014スペイン)
●予選リーグ敗退は1938年以来。
●前回優勝チームで今回2得点のみ。これは歴代下から2位。最下位はフランス(1998優勝)2002年の0点。
●W杯でドイツ史上初、アジアのチームに負けた。
 
 ドイツは悪い記録だけをアップデートしてしまった。
 

メッシの待望の一発、来ました!

6月26日 クビ論争が勝利を生んだ
ナイジェリアーアルゼンチン  1−2

 世界中の ’アルゼンチンはこうあるべき' みたいな念が、試合のシナリオを書いたんじゃないか。前半13分、ロホからバネガ経由のボールをメッシが後ろ向き加減で太ももでトラップして右足を振り抜いた瞬間。「ああ、見たかったのこれ!」とさぞ多くのファンがモニター前で溜飲を下げたと想像できる。
メッシ
     太ももトラップ後、ボールを移動させる瞬間

 7番バネガがこの試合は先発出場していたのも機能した。個人スタッツを見ると、パス成功数80、スルーパス、クロス、ドリブルの成功数も彼がこのゲームではダントツ。先日サンパオリ監督(ミニミー)についてちょっと触れたが、やはりチーム内でも不満が炸裂。アグエロと数人が「監督をクビにしろ」とアルゼンチン協会に嘆願する。アルゼンチン協会理事タピアはサンパオリを擁護。サンパオリの逆鱗に触れたアグエロはこの試合では先発から外された。その代わりに入ったのがイグアインとバネガ。後者が活躍したのは皮肉だが、アグエロの抗議は成功したとも言える。

 後半終了間際のロホのボレーも痛快だった。眠気を吹っ飛ばしてくれた。やっとアルゼンチンらしいゲームになって来た。決勝トーナメントが楽しみだ。個人的には、大会一かっこいいと思っていたナイジェリアのユニフォームを見られないのが残念ではあるけれど。
メッシ背負うロホ
    メッシを背負うロホ。右後方はアグエロ

 おまけ。副音声ならぬ副映像で世界中を沸かせたマラドーナ劇場をご覧ください。
マラドーナ1
    「メッシ、キターーーーーー!神よ感謝します」
マラドーナ2
    「よかったー。ロホがムサのシュートをクリアして」
マラドーナ3
    「イグアイン、そこ外すかー。俺様なら...」
マラドーナ4
                  「ロホ、よく決めた!世界よ、アルゼンチン、なめんなよ!」
       後ろの女性「ほんとこの人、わかりやすいわー。偉いのに」

今日から3ラウンド目。日本時間23時と27時に2試合ずつの開催になります。これは結果を見てチームが1位突破か2位突破を調整する、公式ビッドの掛け率に影響する、ぶっちゃけ八百長、などを避けるために、各グループ同じ時間に試合を実施するもの。おかげで睡眠は取れるものの、何を放映するかはテレビ局のチョイスに委ねられるため、裏の試合は見られないことに。ちょっぴり残念。

6月25日 VARは空気を読まない。変えてしまう
イランーポルトガル  1−1

 今大会優等生だったロナウドが、やんちゃ坊主に戻った試合でもあった。後半5分、ロナウドがペナルティエリア中央で倒れこむ。VAR判定の結果、PKに。意気揚々と蹴るが、ロナウドの地を這うシュートは球筋をしっかり見据えたGKにキャッチされる。

 この直後イランのFWアズマンにイエローカードが出されてから、会場はイランサポーターの重い声援(これがブーイングなのか励ましなのか、筆者にはわからず)で異様な雰囲気になっていく。

 シュートを外し足元を削られるロナウド。表情は苦笑いを超えてかすかな怒りをたたえ始める。後半36分ロナウドがイランDFにひじでこずいたことで2度目のVAR。ロナウドにイエロー。チャンスとばかりにイランは攻めの選手を次々投入し、会場はイランの縦の攻めが光り出す。

 後半終了間際でポルトガル 選手のハンド疑惑が生じ、3度目のVARへ。やってられんわという表情のロナウド。ロスタイム、判定でとったPKをイランの10番アンサリファルドがゴール右上に見事に決めた。1−1の同点。イランはその後も果敢に攻めるがゲームセット。あと5分あればイランが勝ったかもしれない。ロナウドのPKを決めたイランのキーパー、ベイランバンドは、誇りに思っていい。一生自慢していい。 

 VARはいい制度だ。ただ過度の使用にお気をつけください。そんな読後感。

ロナウド&GK
         ゴールキーパーをガン見するロナウド

試合後BBCで「今大会もっとも最年長おじさんチームの日本が驚くべき結果を残した」と。そうですよ、’おじさん’が頑張りましたよ。

6月24日 △から「ケイスケホンダ」へ
日本ーセネガル 2−2

 柴崎が作ったゲームだった。駆け上がるセネガルの選手をカニのように羽交い締めして止める光景は鬼気迫るものがあった。こんな柴崎らしくないプレイを観れるのも、W杯の幸せ。
柴崎
        試合後外国人から柴崎への賛辞がTwitter にあふれた


 長友もよく走ったしボールをセンターに集めた。長谷部も顔をはたかれ鼻血を出しながらもパスの成功率は92.3%と両チームでいちばん高かった。吉田も前線に上がってはセネガルに負けない長身で相手をビビらせた。交代で入った岡崎が身を挺してGK を止めなければ、本田の1点はなかった。BBCが’おじさんチーム’と表現したのは言いえて妙。

 しかし最後に持っていったのは、本田だ。試合二日前に彼はこうTweetしている。

 人の悪いところを粗探しして優越感にひたろうとしている人。
 悪口を言い合える仲間を見つけて安心する人。

 気持ちは分かるし、僕は味方ですからね。
 僕も才能がなく祖父母からも「お前なんかがプロになれるか!」と言われて、コンプレックスだらけだったので。

 ありがとう!これからも宜しくです!

 この人は本当にメンタルが強い。他人から降りかかってくる負の感情をプラスのエネルギーに転換できるこの強さ。おそらく日本人にいちばん足りない部分だ。そして必ず結果にコミットする。舌をぺろっと出す本田を見た時「へっへぇー、ざまあみろ!」と言われているような気がして、痛快だった。

本田ベロ

 先日のNHKプロフェッショナルの流儀で「プロフェッショナルとは?」と聞かれて本田は「ケイスケホンダ」と答えた。2014年W杯で最初のゴールを決めた本田△(本田さん、カッケー)は、’ケイスケホンダ’になった。彼のセルフブランディングは着実に成功している。
本田ベロ柴崎
        この写真、好き。



 
 


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