2018年07月

 日本は台風12号で大変のようですね。まずはお見舞い申し上げます。

 一年中夏の国。フィリピンで暮らす前はそんな印象を持っていました。違うんです。純粋に夏と呼ばれるのは3−5月のみ。 6月から雨季が始まり10月末まで続きます。ほぼほぼ毎日雨。7−9月には、ほぼ毎週フィリピンの近くで台風が生まれて、時々日本にも迷惑をかけていますね。台風に代わって謝ります。ごめんなさい。

 ほぼほぼ毎日雨が降ると何が起きるかというと街のあちこちで洪水が。治水や排水が整っていないからね。アスファルトの道路が陥没することも最近わかりました。「どうしてアスファルトが凹むのだ?」と根本的な質問をドライバーにしたら、素材の中に砂などの不純物を混ぜているから、と。これが正しいのかどうか私は道路の素人なのでわかりませんが、とにかく主要道路に大きな水たまりができる。そこを車は避けるので走行できる範囲が狭くなり渋滞が生まれる。先週メルセデスが水たまりにはまって道路の真ん中で立ち往生していたのには愕然としました。こういうときトヨタやホンダは強い。本当に強い。

 人も病気になりがち。ベトナムでもそうでしたが、雨季=Sick という概念が確立していて、確かに会社を休む人が毎日数人います。気温も29−25度のレンジで「27度、寒いよねー」的な会話が交わされる。私は長袖一枚ですが、ローカル社員たちは長袖の上にパーカーを着ていることが多い。レインブーツに商機ありと思えばそうでもなく、ビーサンやビニール製の普通の靴で凌いでいる。
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こんな感じ。これは先週日曜の分。

 野菜の値段も高騰します。フィリピンは、もともと野菜の種類が少なく割高です。最近ではゲンコツ2つ大のキャベツ一つに140ペソ(約300円)。こちらの基準からするとメチャ高です。鶏肉、豚肉の方が圧倒的に安い。陽が差さないからトマトも黄色か緑で甘みも酸味もありません。そういえばトマトはナス科なんだからしょうがない、炒め物に使えと自分に言い聞かせています。

 一つ利点があるとすれば、ベトナムにいる時より日焼け止めの使用量が減ったことでしょうか。たまに太陽が出てくると、ちょっとウキウキします。今日は久しぶりの晴れ。これからちょっと散歩をしてこようかな。久々に日焼け止めを塗って。
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終わっちゃいましたね。しかし今回ほど女性が観たワールドカップはなかったんじゃないか。それほどイケメンもいなかったんですけどね(ごめん)

7月15日 ヒーロー不在(ごめん)でなぜ楽しかったのだろう
決勝戦 フランスークロアチア 4−2

 予選リーグでドイツがまさかの敗退。決勝トーナメントでもポルトガル、アルゼンチン、スペインが次々に陥落し、クリロナ、メッシ、イニエスタがはらはら舞い散る桜のように姿を消した。得点王リストに残ったのもかろうじてクリロナの3位のみ。ネイマールもゴールよりも過度の演技がみんなの鼻につき、転がる映像とネイマールチャレンジという不名誉なゲームとネイマールアルファベットと、ネット職人の餌食に成り果てた。
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          ©️  @chidajunsei3163     

 超弩級の主役がどんどん抜け落ちていく連続ドラマが、なぜここまで面白かったんだろう。
 ドイツーメキシコ戦、アルゼンチンーアイスランド戦は秀逸だった。どちらもドイツ、アルゼンチン以外は、世界中がメキシコとアイスランドを応援していたと思う。いや大げさでなく。相手が大物だからといって臆することなく、伸び伸びと全力でぶつかる一人一人の姿に、ピュアな自分を見つけようとしたか。普段は仕事を持ってサッカーは副業的という生き方に、昨今の副業解禁論を重ねて自分なら何をできるかと思いをくゆらせたのか。日本ーポーランド戦では企業の管理職、経営者が自分が西野監督ならどうするか、学校の先生やサッカーコーチは目の前で起きていることを子供にどう伝えるか、真剣に悩んだ。少なくとも1日は。

 改めてメディア地図を見る。特定ゾーンをカバーするテレビの上に、細かく勝手に世界中に増殖していくネットやSNSといったラインが重なったことも大きい。大きなブラウン管(あえてこの言葉を使わせていただく)で映像を見ながら、Twitterやfacebookでシェアされる個々のエピソードが各シーンをドラマタイズする。台本がないから、意外性に「自分だったらどうする」と当てはめてしまう。

 決勝戦のフランスークロアチアはそれこそ予想不可能なごった煮だった。ペナルティエリアで怪しいダイブをするグリーズマン、得たFKがマンジュキッチの頭にあたりオウンゴール。クロアチアの1点目を華麗に決めたペリシッチは、VAR判定でハンドを取られてPKに。ポグバはグリーズマンとピンポンのようなやり取りからゴールを決める。プーチン体制を批判するパンクバンドPussy Riot がピッチに乱入しクロアチアDFのロヴレンはぶち切れるわエムバペはハイファイブをするわ。
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Pussy Riot とエムバペ。なぜ?
4−1でフランス勝利必至という時点でオウンゴールをやらかしたマンジュキッチが得点したのは、ベテランの根性からだ。1998年フランスが優勝したときの優雅なシャンパンサッカーとは程遠い、10分に一度ハプニングが起こるバラエティー戦。63%ボールを保持し、ひたすら走り回ったクロアチアの選手はどう感じたのだろう。
大統領とモドリッチ
   モドリッチの涙をぬぐうクロアチア大統領

 タイミングを見計らったように表彰式で豪雨に見舞われる。ニコリともしないMVPモドリッチとヤングプレーヤー賞をもらって笑顔のエムバペ。対照的な二人が最後にステージに上がったこのシーンだけは、お約束だったか。
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 こうして一ヶ月に及ぶ壮大なドラマは終わった。
 件のアイスランドの監督は、昨日舞台を降りて歯医者に戻った。
 子供の頃からエムバペのヒーローは終始クリロナだった。暴れん坊に見えるクリロナだが、実はチャリティーには前向きで数々の貢献をしている。エムバペはW杯で獲得した報奨金約5700万円を慈善団体に寄付するという。まだ19歳。クリロナの影響をここでも受けているのかも知れない。やはりヒーローは必要だ。ワールドカップでは、こうしてヒーローがヒーローを生んでいく。すでに4年後が待ち遠しい。
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   2010年からルイヴィトンは優勝カップを入れるケースを提供している

ベルギー対イングランド。実は予選リーグでもこの2チームはグループGで対戦していました。3位決定戦でも対決する。これは初です。さて。決勝トーナメントになってから、It's coming home というフレーズを何度か耳にされたかもしれません。BBCでは終始誰かが語っていたイングランドの決め台詞。今日はそれについて。

7月14日 It's coming home とサウスゲートの因縁
3位決定戦 ベルギーーイングランド 2−0

 これが日本相手に焦りを見せたチームかと思うほど、ベルギーの強さは安定していた。いや、イングランドが2日前の死闘クロアチア戦から体調を戻しきれなかったという方が正しいだろう。若くても、メンタルまで平常に戻すパワーは最年少のチームにはなかった。
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得点を喜ぶアザール、シャドリ、デ・ブライネ
 開始後4分にムニエのゴール。勝ち越しの2点目、デ・ブライネがドリブルでDFたちをかわしスルーパスをアザールに出してからのゴールも、デジャブな試合運びと感じる。ああ、プレミアリーグでよく見かける流れ。ベルギーなのに。
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ローズを振り切ってシュートを決めるムニエ
 この日両チームのプレイヤー22人中、ケインの所属するトットナム6人、アザールのチェルシー3人、デ・ブライネのマンC4人、ルカクのマンU2人。まるでプレミアの親善試合だ。3位決定戦という消化試合的なポジションもあるが、プレミアリーグがいかに層の厚い’組織’であるかも示唆している。

 試合後にサウスゲート監督が、ベルギー、イングランド問わず選手たちにハグしては言葉を交わしていた。いつも3ピースのベストを着用しクールな表情を保っていたが、叩き上げの苦労人監督という方がふさわしい人。2013年からU-21代表を率い、不祥事で解任された前監督の後を受けて16年9月にA代表暫定監督に、同12月に正式就任した。今回の代表チームが若いのもケインらU-21時代の教え子を重用しているから。暫定監督時代には、プレミアの1部、2部リーグの試合を丹念に見て回り選手選定に力を注いだ。サウスゲートの特徴は、まめに褒めて伸ばす。それがイマ時の若者を指導するのに向いていたのかもしれない。ちなみにサウスゲート自身は、A代表ではDFだった。
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"デ・ブライネ君、君は本当にFantasicだったよ" 

   イングランドがコロンビアとのPK戦に勝った日、SpotifyでThree Lions(Football's coming home) いう歌が相当数配信された。96年の欧州選手権のテーマソングで、”It's coming home(フットボールが帰ってくる)"というフレーズが印象的。優勝した66年のW杯同様に自国開催だった96年大会での優勝を願った曲だった。そころがその準決勝のPK戦で失敗し、チームを敗退させてしまったのが、現役時代のサウスゲートである。

 当時の戦犯が今や国を引っ張るヒーローに。数日で同曲はヒットチャートに返り咲き、国民はサウスゲートと教え子たちがトロフィーを持ち帰るドラマを期待する。残念ながらIt's coming home は叶わなかったが、サウスゲートは多くのイギリス人に、次の大会への希望を持たせた。数々のジンクスを打ち破って元気を与えた。彼が期間中着ていたベストは、ロンドン博物館から寄贈を求められているらしい。 いかにもシャーロックホームズを生んだ国らしい。
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  クロアチア戦開始前に、観客席で一緒にセルフィーをとるサウスゲート。お茶目さんである

 

 



  

決勝戦はフランスークロアチア。3位決定戦はベルギーーイングランド。あと2試合になってしまいました。ふう

7月11日 最後の一滴まで絞りきった体力が。
クロアチアーイングランド 2−1(延長戦)

 イングランドがスウェーデンを下し準決勝進出を決めた7月7日夜、ロンドンにあるロシア政府観光局は、イングランドがW杯に残っている限り24時間ビザを発行しフライトとホテルの予約も手伝うと宣言。そのせいだろうか、会場にはイングランドサポの姿が過去の試合よりも多い。そんな彼らの目の前で前半5分、美しいFKを決めたトリッピアーはさぞ誇らしかったろう。チーム全体も俺たちは勝てると盲信したかもしれない。
イングランド観客

  決勝トーナメントに入ってから3試合連続延長戦。そのうち2つはPK戦まで。つまり最低360分。時間的にも1試合余分に戦っているクロアチアはこの後大丈夫かと心配した筆者が甘かった。ブロゾビッチやヴィダの徹底的な守りにイングランドはなかなか攻めきれない。ケインも2度チャンスを逃した。

 後半クロアチアは、レビッチとペリシッチがサイドを替えて出てくる。これが効を奏しクロアチアのボールが自由に動き出す。ブルサリコからのクロスを足で合わせてペリシッチ、GOAL! イングランドの守備にほころびが出はじめたのをクロアチアの中盤は見逃さず、ゾンビのように次から次へと襲いかかる。最後の砦はキーパーのピックフォード。W杯初出場の24歳がファインセーブを見せるとアナウンサーは’Brick Wall' と絶叫する。拮抗する状態で延長戦へ。最後に決めたのはマンジュキッチ。今大会不発と言われてきたエースが最後に根性を見せた。
ピックフォード
    マンジュキッチに決められた後のピックフォード

 クロアチアのダイナモ、モドリッチはこの試合で得点には絡まなかったが、中盤を撹乱した。通算出場時間604分、全出場選手で最長。決勝戦には万全の体調で活躍して欲しい。その華奢な体でゴールを決めてくれたら、もう最高だ。
modoricKane
    薄いモドリッチとゴツいケイン。真ん中の女子は一生自慢できますね

 クロアチアの走行距離は143.28km。驚いちゃいけない。イングランドは147.82kmだ。両チームとも体力の最後の一滴までよく走った。Sleep well!
眠るクロアチア
   クロアチア選手の気持ち。わかるなあ

客席にミックジャガーの姿があった。彼が応援するチームは負けるというジンクスがある。イングランドファンが、ミックが間違えて?この日にいてくれてよかったと騒いでいる。
 
7月10日 アンチ・フットボールで勝った
フランスーベルギー 1−0

 最初の15分が最も面白かった。ボールが早い。ベルギーが両横から攻める。フランスもカンテが刈ったボールをグリーズマン、ポグバにつなぐ。エムバペがペナルティエリアに走り込むもクルトワにかわされる。
エムバペ回転
   
 後半コーナーからのボールをDFウンティティがゴールに決めてからは、フランスは守りに徹する。最後の10分間、グリーズマンは相手が保持するボールを取り上げるわけでもなく原っぱを走る犬のように追いかける。一見ムダに見える走行が効いていたと今あらためて感じる。勝つということ。試合後マルティネス監督は語る「ボールが死んでいた」。「僕はあんなフランス代表の一員として勝つくらいならばベルギー代表の一員として負けた方がいい」とアザール。何度もファインセーブを見せたクルトワも「フランスはアンチ・フットボールで臨んできた」と相手の戦術を批判する。
アザール
   負けても誇らしげな主将アザール

 冷静なクルトワが感情をあらわにするのは珍しい。フランスで中盤のボールを刈って回ったのは、名ボランチのカンテ。シュートを試みるが何度も外し後半はディフェンスに徹したストライカー(であるはずの)ジルー。二人ともクルトワが所属するチェルシーの同僚だ。ふだん見ない、見たくないサッカーをクルトワはこの試合で体験してしまった。ちなみにオールフランスで倒して倒して止めにかかったアザールもチェルシーの人だ。

 ジルーは、エムバペがヒールパスで出した絶好の機会を外したことを先頭に、ネットで大炎上中だ。勝ったチーム所属なのに。●ジルーはこのW杯で7時間もピッチに立っているのに一発も枠内に入ってない●ジルーはジョークだ●ジルーは決勝戦で得点するために、今まで全てわざと外している●フランスの子供がテキストするときに使う用語。OMG=Our Man Giroud●ジルーはサンダルを履いてプレイしていたようだ●ジルーとベンゼマ(レアルマドリーのストライカー。恐喝事件を起こした疑惑がありこのW杯には召集されていない)はこのW杯で同じスコア数だ(=ゼロ)。このあたりにしておくが、彼はチェルシーに戻ってからも当分イジられることは間違いない。
ジルーとウンティティ
   得点したウンティティにキスするジルー。これも炎上中

 アンリは、試合後デシャン監督に祝福のハグをする。ベルギーのコーチでもある彼は、心の中だけで微笑んでいる。
アンリとデシャン



 


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