2018年07月


 
7月7日 今なぜイブラ対ベッカム?
スウェーデンーイングランド 0−2

 シンプルなゲームだった。先制点を取って盤石の試合運びを見せるイングランドとロングパスに頼るだけのスウェーデン。主将ケインをペナルティーゾーンで見る回数も少なく、より多くのプレイヤーに機会を与えていたように見える。実際ゴールゲッターは、初代表のDFマグワイアと22歳のMFデレ・アリ。後半の交代投入は、デルフ、ダイアー、そして20歳のラッシュフォード。もうテストマッチのノリである。
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    先制ヘディングを決めたマグワイア(右)とストーンズ(23歳)
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   後半14分にダメ押しのゴールを決めたデレ・アリ
 
 そんな試合の裏で、両チームの先輩たちが火花を散らしていたことをご存知だろうか。ことはイブラヒモビッチがベッカムに対して送ったツイートから始まった。「Yo、ベッカム!もし、イングランドが勝ったら、俺は君がディナーを奢るぜ。世界中のなんでもいい。でも、もしもスウェーデンが勝ったなら俺が欲しいIKEAの商品を何でも買ってくれ。OK?」

 対するベッカムは「イブラヒモビッチ、もしスウェーデンが勝ったら君がLAギャラクシー生活で住むマンションに必要な全てをIKEAで買ってやる。でもイングランドが勝ったら、君にイングランドのゲームを見てほしい。イングランドのユニフォームを着てウェンブリー競技場で。そしてハーフタイムにはフィッシュ&チップスを楽しむんだぜ」そんなカケが始まったわけだ。

 
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 なぜベッカムがイブラのイングランド体験にこだわったか。理由は2012年11月14日に遡る。この日スウェーデンーイングランドの親善試合が開かれた。結果はイブラ一人に4点取られて負けるという歴史的屈辱もの。それだけにベッカムは、再びイングランドの負けを期待するイブラにひと泡吹かせたかったのだろう。
 
 そしてイングランドは勝った。普段の70%の力で。イブラがウェンブリーでフィッシュ&チップスをつまんでいる姿を見てみたい気もする。

 おっと、またサウスゲート監督について書く機会を逸してしまった。続きは次回。

最後はPK戦。見ている方もぐったり。クロアチアは次のイングランド戦まで回復できるだろうか。
 
7月7日 史上最弱のホスト国で光ったブラジルのプライド
ロシアークロアチア 2−2(PK3−4)

 FIFAランキング70位、ノーマークからベスト8まで勝ち上がった開催国ロシアと、20年ぶりにベスト4進出をねらうクロアチア。肉弾が骨を叩き割るような試合だった。

 パワーでガンガン来るロシアを、老獪にかわしていくクロアチア。華奢なカラダで走る10人にはもう限界がきている。延長20分。1−2。もうこのまま終わらせてクロアチア勝ちでいいじゃん、と思ったところにFKからのクロスをノーマークだったマリオ・フェルナンデスが頭で決めて2−2へ。ロシアの意地を感じた一瞬。めげることなくクロアチアの熟練キーパー、スバシッチが大声でチームにハッパをかける。試合は両軍共避けたかったPK戦へ。
走るクロアチア
     
試合後よろこびを爆発させるクロアチア。痩せてます

 5人がフルに蹴るPK戦。ロシア3人目のフェルナンデスは枠外に外してしまう。彼は勝つために決めたゴールより、外したPKで覚えられるかもしれない。
フェルナンデス
できれば、これを読むあなたには違う事実で覚えて欲しい。フェルナンデスは元グレミオでプレイしていたブラジル人。18歳でグレミオと契約するが、すぐ競技場を抜け出す。3日後に見つかった時は空腹で死にそうで、おまけに鬱病になりかけていた。2014年10月のキリンカップでブラジル代表としてデビューを飾るが当時の所属はもうCSKモスクワ。2017年10月からロシア代表になる。この日もパスの成功数も彼が一番多く、縦横無尽の働きだった。189cmの長身で繊細な心をもつDF。これからもロシアの右サイドバックとして活躍してほしい。
抱きつくモドリッチ
   ゲームが終わって、スバシッチに抱きつくモドリッチ。2戦連続これ

 おまけ。現場にはクロアチア大統領、グラバル=キタロヴィッチも応援に来ていた。美人ですね。
大統領



 

 
 


試合ごとに強くなるフランス。1点目を決めたのはバラン。最終ラインを守るディフェンダーが前線まで上がっていた。

7月6日 カバーニがいれば...
ウルグアイーフランス 0−2

 フランスは2点取ったものの、ちぐはぐな試合だった。ウルグアイも善戦するが、最後の決定力に欠ける。孤軍奮闘スアレス。カバーニが怪我で不在なのが痛い。彼がいれば前半37−39分の好機に2点は確実に取れていた。
呆然スアレス
  
何度も呆然とするスアレス
 
 ハプニングが多かったのも特徴だろう。
●トンボがフランスのキーパー、ロリスの口に飛び込んだ。その後のファインセーブがあったからよかったけれど。
トンボ


●ナンデスのユニフォームが破れた。最近のユニフォームは丈夫と聞いているが。フランスのエルナンデスはユニを引っ張った行為でイエローカード。

●グリーズマン、左足で素晴らしいミドルを打ち、キーパーのパンチングミスで得点。しかし全く喜ぶ様子を見せない。
グリーズ&ムバッペ
   
ゴールを決めても無表情のグリーズマンをエムバペが祝いにくる
その理由は、昔アトレチコマドリードでプロとしてサッカーを始めたときに、ウルグアイのゴディンとヒメネスにお世話になったから。Respect があるので喜べなかった、と試合後のMan ot the matchインタビューで語る。

●後半22分エムバペ(ムバッペ)がボールのないところで勝手に倒れる。これを元に両軍ヒートアップ。転ぶとヒーローになれるとネイマールに仕込まれたのだろうか。エムバペ、これでイエロー。
うる仏大混乱


●後半43分、ヒメネスが泣き出す。自分のミスでFKを与えてしまったからなのか、もどかしい試合進行に大してなのか。試合中に泣く選手は前代未聞。
泣くヒメネス

泣く少年
    
泣き出す少年。2030年W杯でリベンジしてほしい

 4秒でわかるようにまとめるのが難儀な試合だった。原因は、カバーニがいなかったからか。スアレスとカバーニは同じ31歳でいいコンビなのに、国際試合はどちらかが怪我やレッドで欠けることが多い。二人の連携を4年後のカタールでもう一度見たい。見たいなあ。
スアレスとカバーニ
    スアレスをなぐさめるカバーニ。カバーニは選手ひとり一人ハグして回っていた


ブラジルを叩きのめしたベルギー。次はフランスと戦いますが、個の力によるフランスと全員がじわじわ強いベルギーでは、後者かなとも思っています。
 
7月6日 24戦無敗のベルギーとは
ブラジルーベルギー 1−2

 アディショナルタイム5分を含めた96分のうち80分はベルギー優勢。それほど力の差は歴然だった。

 ベルギーは今回先発を変えてきた。メルテンスと(イケメン)カラスコではなく、アフロのフェライニとシャドリという日本戦の途中交代で得点した2人を起用。

 ベルギーの大きなアフロ194cmフェライリと186cmビツェルが中盤を引っ掻き回し、ブラジルのちびっこアフロ、174cmマルセロと175cmウィリアンが左右からゲームメイクする。ときどきマッチアップするシーンもあって視覚的に面白い。しかし後半ウィリアンは交代、マルセロも疲れを見せてアフロ対決はベルギーに軍杯。
4人のアフロ
 
4人のアフロ。左上から時計回りにフェライリ、マルセロ、ビツェル、ウィリアン
 
 出場停止をくらったカミゼーロに変わりに出てきたフェルナンジーニョ。オウンゴールはするわ、マンCのチームメイト、デ・ブライネをマークするはずが見事なミドルシュートを決められるわで散々。フェルナンジーニョ、いやブラジルは運がなかった。

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   Man of the match のデ・ブライネ

 ベルギーの堅守も光った。3バックでスタートしながら守備時にはベルトンゲンがサイドバックに開く4バックになる。15番ムニエはネイマールを徹底的に潰し、アディショナルタイムの5分もボールを持ち続けるアザールの周りを走り人を寄せ付けない。尋常じゃないエネルギー。何よりもキーパーのクルトワが体を張って守った。他のキーパーなら2点は取られていたかもしれない。
ベルギー円陣
    勝利後に円陣を組むベルギー。いいチームだ

 あえて言う。10番の品格である。削られても抱きつかれても立ち上がりパスを出しドリブルで上がるアザールと、自分から転がるネイマール。後者が審判の心象を悪くしたであろうことは想像に難くない。

 この試合、日本戦では見られなかったタブレットを使っての選手への指示が、ベルギー陣に何度か見られた。戦術の徹底。イラつくチッチ監督に比べ、マルティネス監督は終始上機嫌だった。ベルギーが24戦無敗の理由はここにもある。一方で、この強豪を90分やきもきさせた日本代表をちょっぴり誇らしく思っている。
マルティネス
     
インタビューの時は眼光鋭いマルティネス監督



7月5日 中国に支えられたW杯

 W杯は代理戦争と言われるが、経済の栄枯盛衰もよくわかる。
 
 今大会で一番見かけたのは、WANDAのバナーだろう。WANDAは中国最大の不動産企業。今回FIFA公式スポンサーの7社に仲間入りした。
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ちなみに他の6社はCoca Cola, adidas, Gasprom(ロシアのエネルギー大手),Qatar Airways, VISA、Kia motors(韓国現代自動車の一部) 。Twitterでも世界各国語でWANDAって何?とひっきりなしにツイートされる。これだけで大成功だ。
Wakanda Forever
    WANDAを見るとWAKANDA を思い出すというツイートも多かった。映画「ブラックパンサー」は恩恵にあやかったw

 2010、2014年によく見かけたバナーがインドIT大手Mahindra Satyam(オフィシャルITサービスプロバイダ。拙稿7月1日参照)だったことを鑑みると、アジアの資金あってのW杯となりつつある。日本のバナーは2006年ドイツ大会のフジフイルムと東芝が最後だった。

 そしてロシアW杯公式スポンサー5社のうち3社が中国企業だ。念のため。中国は今大会には出場していない。バナーをときどき見かけただろう。スマホのVIVO、中国家電大手のHisense(東芝がテレビ事業を売却した先)、乳製品の蒙牛。蒙牛は試合会場でヨーグルトと牛乳を販売する権利も持っている。

 この乳製品がポイント。ロシアは2014年にクリミア半島を併合。これに怒った西側諸国はロシアに経済制裁を発動したが、プーチン大統領は報復としてEU、アメリカからの肉製品、魚介、乳製品、果物野菜の輸入を2018年末まで禁止する。その間果物野菜はトルコ、モロッコ、中東から。肉、魚介類は国産で。ただし乳製品だけはEU産の高品質に慣れていた国民を国産とベラルーシ産ではごまかせなかった。海外旅行に出かけたロシア人が乳製品をこっそり大量に買ってくるため、外国産乳製品をトラクターで押しつぶすCMを国営放送でオンエアしているほどだ。中国の蒙牛は、ここに目をつけた。ロシア国民に試食してもらう最高の機会=W杯。

 おまけ。WANDAはインフロント・スポーツメディアというスポーツマーケティング会社を傘下に持つ。ここがアジアにある26の国と地域で、2018ロシアW杯および2022年カタールW杯のメディア権を獲得している。

 

 
    




 
    


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