全米で大ヒットを続けている『クレイジー・リッチ・アジアン』を観てきました。原作はシンガポール系華僑ケビン・クワンが書いた「CRAZY RICH ASIANS」。ちょうど一年前、フィリピンに着任したばかりでやることがなくウロウロしていたら、本屋で売り出し中だった物語。
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本の表紙とホテルでのイベント予告(2017年8月)

日本ではなぜか『クレージー・リッチ』というタイトルになるようですね。正直アジアンを取ったら意味がない。それくらいThe Asianな映画なのに、なぜだろう。

 ワーナー、つまりハリウッドの制作でありつつ主要キャストが全員アジア人。これは1993年にエイミー・タンの麻雀女性小説『ジョイラッククラブ』が映画化されて以来。それくらいハリウッド制作方式から外れている作品なのです。映画終了後のエンドクレジットを座席に居座り最後までシカと確認しましたが、見事に全員アジアンだった。でも映像はウエスタン。GUCCIやベルサーチの衣装はユニクロのように普段着で出てくるし、ロールスロイスやaudi、シャンパンがぽんぽん登場します。かつて『ジョイラッククラブ』がいかにも中国系の色を使って映像を作っていたのとは、ちょっと違うかな。

 テーマが玉の輿結婚ゆえアジア版『プリティーウーマン』かと思いきや、女性のキャリアと中華系家族のくびきが織り込まれる。華僑のキャリア志向の女子が観ると、なかなかエモい映画と思われます。

 日本人の私が観て何が一番気になったかというと、主人公をシンガポールに連れて行く御曹司役ヘンリー・ゴールディングが、もう東出昌大にしか見えない。長身、ソツのない感じ、ちょっと耳にカサっと張り付く声、以後東出クンと表記します。
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そして東出クンとその金持ち友人たちの、ツルッと無毛の上半身裸でお腹くっきり6パックの露出が多い。これはアジア系男性を欧米女性に売り込むのにかなり効くはず。ちなみに東出クンことゴールディングは、元BBCの旅番組のレポーターをしておりました。

 アメリカおよびアメリカ人の実態をおちょくっている点も、新鮮。プライベートヘリを数台飛ばすシーンが、明らかに『地獄の黙示録』のパロディー。あの名作の要とも思われるシーンを、笑いにする。主役がパーティーに着ていく服を試着する際に水色や紫といったゼリービーンズカラー満載の、はっきり言ってダサいドレスが登場。そこで「スキットルじゃないんだから」というセリフが出てくる。そして長年使われているタグライン” Touch the Rainbow, Taste the Rainbow "をダメ押しで言わせる。スキットルはアメリカ人にとってミルキーのような存在。それをアジア人がコケにするのはどうなんですかね。さらなるダメ押しで、爽やかな東出クンが飛行機の中で荷物をあげようとしているアメリカ人男性のワキ汗染みを観て顔をしかめるカット。西欧vs東洋の縮図(大げさか)を見ているようで、ねーさんはハラハラしました。


 なお私の好きなミシェル・ヨーが東出クンのお母様として主役の女性をいびり倒す役を演じています。
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    かつてのミシェル・ヨー
『007トウモローネバーダイ
』のセクシーなボンドガールの面影はもうなく、危うく嫌いになりかけましたよ。最後にミシェルと主人公に麻雀対決をさせるのは『ジョイラッククラブ』へのオマージュなのか(詳細はネタバレになるのでここまで)。でも年相応に美しかったと記しておきます。

 読後感としてはこの映画を観るとシンガポールに行きたくなります。ミシェランの味が屋台で食べられるホーカーセンター、セントーサ島、マーライオン、そして植物園ガーデンズ・バイ・ザ・ベイとお約束のマリーナベイサンズがこれでもかと刷り込まれる。実際シンガポール政府観光局は、この映画をプロモーションに利用し始めた様子。かなりのシーンはマレーシアで撮影されたという皮肉な現実はあるけれど。原作者のケビン・クワンはシンガポール育ちなのに兵役(男性はNational Service と呼ばれる徴兵または消防/救急に2年従事しなければならない)を逃れていたため訴追されると囁かれておりますが、これだけシンガポールを売り込んだのだから、免除してよいのでは。私がリー・クワン・ユーなら、そうします。

 ちなみに『クレージー・リッチ』続編も制作されるはず。ミシェル・ヨー以上に私の目を釘付けにした女優ジェンマ・チャン(彼女については、また後日)が、最後に思わせぶりなシーンを見せます。それを見逃さないでね。
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ジェンマ・チャン。劇中ドレスが素晴らしい。