スーパーの店頭にアボカドが並び始めた。フィリピンにも夏が来た。今の外の温度は36度。湿気がないので凌げるとはいえ、外に出ると汗腺がジワジワ開いていくのを感じる。

 夏なのに、困ったことが起きている。先月からマニラはここ数年で最悪の水不足に陥り、広範囲に渡り計画断水を実行中。影響を受けるのは100万世帯つまり680万人(ここからフィリピンの世帯あたりの人数を察していただけるだろうか)。理由は、エルニーニョ現象により干ばつと乾季の影響、マニラ近郊にあるダムの水位が21年ぶりに警戒レベルより下がったからと言われているが、簡単にいうと雨が降らなかったからだ。フィリピンといえば台風の生まれる場所として有名であるが、去年の夏から台風らしい台風はフィリピンに上陸せず、日本を直撃していた記憶がある。さらに今年に入ってからも全く雨が降っていない。2017年9月に私が赴任した直後、台風が次々にやってきて毎日スマホからワンワン来た大雨警報がこの8ヶ月、ピタッとなかった。

 断水する時間は夕方から早朝まで、1日4時間から20時間輪番制で断水時間をエリアごとに設定。

断水
        (マニラの地区ごとの断水情報)

そのエリアに住む人に聞いてみると、バチっと水が止まるのでもなくゆるーい運営のようだ。一つだけしんどいのは、夜間に給水車に並ぶこと。
給水車を待つ


 断水が始まった3月14日から数日間は、オフィスに様々な香水の匂いが充満していた。フィリピン人は綺麗好きなので、シャワーを浴びれないことを気にして香水をつける社員が多かったせいだろう。最近では、エタノールっぽい匂いをそこかしこで感じる。原因はプロパノール(Isopropyl Alcohol) 。
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 溶媒、殺菌に使われるアルコールでエタノールより安く、芳香がある。フィリピンは、外出先で必ずしも手を洗えない環境もあるため、個人でプロパノールの小さいボトルを持ち歩くのがデフォルトだ。その習慣がこの断水を乗り越えるのに役立っている。facebook で「水がなくて困る」的ポストも全く見なくなってしまった。みんな意外と冷静だ。7月まで断水は実行される予定だが、さほどストレスも感じていないようで、このスルー力は素晴らしいと言わざるをえない。

 さて。ここまで読まれてお察しかも知れないが、私自身はまだ断水に直面していない。幸いなことに外国人が住む数エリアは、そのビレッジ単位で水を確保できているからだ。

枯れ噴水
                                  (外国人居住地内。この1ヶ月枯れ噴水)

ただ先週金曜に聞いた情報によると、そろそろ外人エリアでも断水が始まるかも知れないと。備えあれば憂いなし。先ほどスーパーで水を大量に購入して来た。そこで面白いことを発見した。
 
 そもそもフィリピンはナチュラルミネラルウオーターの数が少ない。お店で買うボトルドウオーターは、たいてい国産の蒸留水である。ところが今、イタリアやフランス、オーストラリアからの輸入ナチュラルミネラルウオーターが緑、ピンク、ブルーのボトルに入ってカラフルに大量に陳列されていた。しかも高い値段でもなく。この催し、本当に水が必要な人たちに対しては、微妙にずれているのが微笑ましいというか。ピンチを前向きに捉えようとしているのか何なのかはわからないけれど、個人的に、この水商売は歓迎します。