カテゴリ: リゾート

 ホーリーウイーク休暇を利用してボホール島に行って来た。3月から4月にかけて通常業務に加え、広告賞の審査をオンラインも含め4つもした。何が起きるかというと、シンガポールやタイに行っても観光なしで広告を見続け、マニラにいても打ち合わせの合間や昼食時間を削っては広告を見まくるわけだ。そして素晴らしい作品に出くわすと「なんでこれ、私の仕事じゃないんだろう、悔しい!」でもってそれが夢に出てきて、まあ精神衛生上よろしくない。仕事ラブ、ジャッジはもはやプロ級(笑)の私でも、さすがに参りました。おっと愚痴になっちまった。とにかくWifi、いや広告のないところに行って自然に癒されたかった。

 ボホール島は、7300あるフィリピンの島の中でも個性的な島。美しいビーチはもちろん、不思議な地形チョコレートヒルズと世界最小の猿ターシャが有名である。今回はそれらがお目当てだったのだが、海での出来事が想定外に面白かったので、まず披露しておきたい。

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  この写真を見て何と思われますか?会社の後輩M君からは、インフィニティープール?と質問が寄せられたが、そんな素敵なものではない。
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(これがインフィニティープール。海や空と繋がって見えるのがウリ)

先の写真を拡大してみましょう。なんと、海の中に飲食の屋台が出ているのです。
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 ここはボホールの一部パングラウ島から小型船で40分ほど行ったところにあるヴァージンアイランド。膝上まである海水をジャブジャブ歩き回って、魚介類とソーセージを焼く屋台、ビールやソフトドリンクの店、揚げバナナの店でみんな食べ物を楽しんでいます。そんな中、私の顔をみるや否や「Uni, Uni」と大声で連呼するおじさんが。今、ウニって言いました?

 前日夜、ホテル前のビーチで、生ウニ売りおばさんに遭遇していたが、お腹壊したら怖いと断念。ここで再会したのが運命!とばかりに食べて見ました。ブツは、シラヒゲウニ。
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ハサミでパチンと2つに切って、中を海水で洗う。綺麗になった殻に残ったウニは淡いクリーム色。そこにビネガーをかけて木製スプーンでいただきました。一つ20ペソ(44円)。

 うーむ。確かにウニの風味は感じるけど、ビネガーはナシだよね、ビネガーは。あの濃厚な味が消えてしまうじゃないの。やはりウニには醤油でしょう。おじさんには "Soy Sauce is much better" と言い残しておきました。

 もう一種類、黒地に紫とピンクでやたらゴージャスなウニがありまして、そちらは一つ150ペソ(330円)。
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      (iPhoneを持って海中に行かなかったのを後悔。実物はもっと派手だった)
気になったけど焼いて食べると聞いて、やめた。私が去ろうとした時、中国人のおばさまがやって来て注文。工程を観察することにした。この宝石箱ウニ、通称Rock Sea Urchin に切り込みを入れてパカっと開け、中の海藻や緑豆のごとき小さい異物を洗い流す。すると5筋のオレンジのウニが残った。
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(こんな感じ。もう少しウニは平たかった)
嗚呼、これぞ私の知ってるウニじゃないですか。殻ごと炭火で焼いたそれにおじさんがビネガーをかける。味わうおばさまに「ハオツー(美味しい?)」って尋ねたら、両手を広げて首をすくめた。やっぱりビネガーはダメだったんだろうな(推測)。

 フィリピン人にとって一番の調味料は、実はビネガーだったりする。大抵の揚げ物にかけるし、煮物にも必ず入っている。種類もたくさんあるのに驚きました。酸味を味わうのはもちろんだろうが、腐敗防止の効果の方が大きいのではないか。なにせ暑い国なので。ウニも、ナマモノなのでビネガーで殺菌しているのでしょうね。

 さて。予備知識も何も持たずに参加した私は、このヴァージンアイランドには単なる腹ごしらえの場として立ち寄ったのかと思いきや、そうではない。船を操縦するお兄さんによると、ここは干潮時には白い砂の道が現れて幻想的な浅瀬となる”サンドバー”で有名なのでした。
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 ご覧ください。これがヴァージンアイランド 本来のウリ。ただサンドバーが現れる時間は限られているとのこと。白砂の道を体験するために、また来なくては。しかしそうなると海中屋台は出現しないし、ウニを立ち食いすることはできないのか。悩ましい。

 この日、イルカが3頭列になって泳ぐのを見て、潜ってウミガメに遭遇したにもかかわらず、私の興味は海の真ん中で食べるウニにガッツリ持っていかれたことでした。チョコレートヒルズとターシャについては、後日!


 ずーっとあることを夢見ていると、何かの拍子に叶うことがある。先週カナリア諸島を訪れることができたのは、そんな僥倖のひとつ。
 国際広告賞のひとつClio賞の審査がこの島で行われた。案内のメールはもらっていたものの、SpainのTenerifeという街であるという程度の認識で事前に調べることもせず、どうやら自分の目的地がカナリア諸島Canary Islandsであることがわかったのは、2度目のトランジットMadridの空港ゲートで。どんだけ鈍感なんだ、自分。
 
   なぜカナリア諸島にそんなに惹かれていたか。それは大滝詠一さんの『カナリア諸島にて』のせい。
 ♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて 海に向いたテラスでペンだけ滑らす
で始まる歌を耳にすると、青く透き通った世界が3Dで立ち上がってくる。この時代の歌が全般的に凄いのは、歌詞が奔放で、ああこんな言葉の使い方もありなんだと思わせてくれるところ。さすが大好きな松本隆さま♡もちろん大滝さんのメジャーだかマイナーだかよくわからん不思議なコード進行もあるけれど。詳しくもないくせにすみません。
    
カナリア諸島

 さて。7つの島で構成されるカナリア諸島は、スペインなんだけどモロッコの左横に位置し、むしろアフリカの一部に見える。私の滞在したTenerifeが一番大きい島で一番人気らしい。誰に人気かというとヨーロッパの家族連れ、あと年金生活のお金持ち夫婦に。『カナリア諸島』を聴いていた時は、カップルにふさわしい素敵なリゾートなんだろうと勝手に想像していたが、全く違ってました。はい。

  まず火山島である。湿気が全くない。カップル向けのリゾート地には、ある種湿気がないといかんと勝手に思っているが、ここは淫靡な空気はこれっぽちもない。しかも空気が動かない。香水をつけてもはかなく消えてしまう場所。同じスカイブルーの空と火山しばりだと、ハワイ島を思い出すが、まだあっちの方がカップル向きである。なんでだろう。ハワイだと海辺にサラサラしたやさしい風が吹くからだろうか。

 半日の空き時間を利用して、スペイン一の火山Mt. Teideに登ってみた。富士山に近い標高3,718m。
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でもケーブルカーに8分乗れば頂上にたどり着けちゃうんです。だから頂上は子供連れだらけ。トレッキング道も元の火山石を活かして、少々の凸凹をスニーカーで乗り切れる程度に整理(と一見ではわからない)してある。
富士山に過去2回汗まみれになって登頂した人間としては、ちょっと拍子抜けしました。同じくらい寒かった。でも、ゴミはなかった。 
 
 名産はバナナ。火山灰との固有の土がつくる土台にワシワシと生えている。飛行機が降りるときに見えた海沿いをぐるりと囲むグリーンベルトはこれだったのかー。朝食で食べてみました。むっちり濃く、ハーゲンダッツみたいに甘い。複雑に甘い。ミネラルがいっぱい含まれているのだろう。日本で食べるフィリピンやキューバ産の優しい味のバナナとは違う。ちなみにベトナムのバナナも全く違うんですよー。ベトナムのは小さくて短くてちょっと腐ってるのかなコレ?みたいな酸味がします。余談ですが。
 
 ハエ天国である。テラスで朝食やランチを食べていると、まあ飛んでくる飛んでくる。一人あたり5羽を追い払わないといかん。追っ払おうと手をハタハタしていると、ああこれは一時期日本ではやったパラパラ。審査員達が全員それをやってる姿を想像してください。笑えます。
ここでハエ対策を考えたらInnovation CategoryのGoldをあげてもいい、という提案も出たくらい。ま、
温暖な気候で無風状態、バナナ畑。これがハエに取ってパラダイス。ときどき指のうえに止まることもあった(!)。どんだけ人に慣れてるんだか。ハエ対策として朝も昼もテーブルにはレモングラスのでかいキャンドルが置いてありました。キャンドルはムード作りのためだけにあるのではないのですね。
 
 キッズ対応。大手のリゾート、ホテルだとキッズプログラムがあります。室内用、アウトドア用。小さな子供連れのファミリーには素晴らしいことじゃないでしょうか。男性審査員の一人が家族連れで来ていて、昼間子供二人はキッズプログラム、奥様はSpaでのんびりさせている。一年分の罪滅ぼしがここで出来ていると目に力を込めて言っておりました。

 あれ、カナリア諸島、不思議な土地に見えてます?でも美味しいところは最後にくるのです。このTenerifeという島だけでビーチが70もある。70。私はホテルに附属しているAbamaというたった一つのビーチしか体験できなかったけれど、水が透き通っていて重くて冷たくて気持ちよかった。明るい午後8時。綺麗な魚こそいないが、浜から200mくらい沖に泳ぐと岩場があって、ウニがいっぱい生息していた。一瞬穫ろうかと誘惑にかられた。ホテル所属のライフガードみたいなおじさんが一人仁王立ちしてこっちを見ていたから止めました。別の言い方をすると、沖でも安全。ベージュの砂浜も優雅さを醸し出している。火山の島だから切り立った地層を観察もできます。あと69のビーチを訪れる機会はあるかなあ。
 
『カナリア諸島にて』のサビは、
 ♪カナリアアイランド、カナリアアイランド
  風も動かぁなぁぁぁい
Tenerifeは、ほんとうに風も動かない、静かな街だった。
作詞した松本隆さんは、当時行った事がないから想像で書いたとおっしゃっていた。その想像力で、当時ひとりの少女の夢はつくられてしまったのだ。
 
 

 
 
 

  

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