カテゴリ: ワールドカップ

決勝トーナメントになってから、It's coming home というフレーズを何度か耳にされたかもしれません。BBCでは終始誰かが語っていたイングランドの決め台詞。今日はそれについて。

7月14日 It's coming home とサウスゲートの因縁
3位決定戦 ベルギーーイングランド 2−0

 これが日本相手に焦りを見せたチームかと思うほど、ベルギーの強さは安定していた。いや、イングランドが2日前の死闘クロアチア戦から体調を戻しきれなかったという方が正しいだろう。若くても、メンタルまで平常に戻すパワーは最年少のチームにはなかった。
ベルギー3人衆
   
得点を喜ぶアザール、シャドリ、デ・ブライネ
 開始後4分にムニエのゴール。勝ち越しの2点目、デ・ブライネがドリブルでDFたちをかわしスルーパスをアザールに出してからのゴールも、デジャブな試合運びと感じる。ああ、プレミアリーグでよく見かける流れ。ベルギーなのに。
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ローズを振り切ってシュートを決めるムニエ
 この日両チームのプレイヤー22人中、ケインの所属するトットナム6人、アザールのチェルシー3人、デ・ブライネのマンC4人、ルカクのマンU2人。まるでプレミアの親善試合だ。3位決定戦という消化試合的なポジションもあるが、プレミアリーグがいかに層の厚い’組織’であるかも示唆している。

 試合後にサウスゲート監督が、ベルギー、イングランド問わず選手たちにハグしては言葉を交わしていた。いつも3ピースのベストを着用しクールな表情を保っていたが、叩き上げの苦労人監督という方がふさわしい人。2013年からU-21代表を率い、不祥事で解任された前監督の後を受けて16年9月にA代表暫定監督に、同12月に正式就任した。今回の代表チームが若いのもケインらU-21時代の教え子を重用しているから。暫定監督時代には、プレミアの1部、2部リーグの試合を丹念に見て回り選手選定に力を注いだ。サウスゲートの特徴は、まめに褒めて伸ばす。それがイマ時の若者を指導するのに向いていたのかもしれない。ちなみにサウスゲート自身は、A代表ではDFだった。
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"デ・ブライネ君、君は本当にFantasicだったよ" 

   イングランドがコロンビアとのPK戦に勝った日、SpotifyでThree Lions(Football's coming home) いう歌が相当数配信された。96年の欧州選手権のテーマソングで、”It's coming home(フットボールが帰ってくる)"というフレーズが印象的。優勝した66年のW杯同様に自国開催だった96年大会での優勝を願った曲だった。そころがその準決勝のPK戦で失敗し、チームを敗退させてしまったのが、現役時代のサウスゲートである。

 当時の戦犯が今や国を引っ張るヒーローに。数日で同曲はヒットチャートに返り咲き、国民はサウスゲートと教え子たちがトロフィーを持ち帰るドラマを期待する。残念ながらIt's coming home は叶わなかったが、サウスゲートは多くのイギリス人に、次の大会への希望を持たせた。数々のジンクスを打ち破って元気を与えた。彼が期間中着ていたベストは、ロンドン博物館から寄贈を求められているらしい。 いかにもシャーロックホームズを生んだ国らしい。
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  クロアチア戦開始前に、観客席で一緒にセルフィーをとるサウスゲート。お茶目さんである

 

 



  

決勝戦はフランスークロアチア。3位決定戦はベルギーーイングランド。あと2試合になってしまいました。ふう

7月11日 最後の一滴まで絞りきった体力が。
クロアチアーイングランド 2−1(延長戦)

 イングランドがスウェーデンを下し準決勝進出を決めた7月7日夜、ロンドンにあるロシア政府観光局は、イングランドがW杯に残っている限り24時間ビザを発行しフライトとホテルの予約も手伝うと宣言。そのせいだろうか、会場にはイングランドサポの姿が過去の試合よりも多い。そんな彼らの目の前で前半5分、美しいFKを決めたトリッピアーはさぞ誇らしかったろう。チーム全体も俺たちは勝てると盲信したかもしれない。
イングランド観客

  決勝トーナメントに入ってから3試合連続延長戦。そのうち2つはPK戦まで。つまり最低360分。時間的にも1試合余分に戦っているクロアチアはこの後大丈夫かと心配した筆者が甘かった。ブロゾビッチやヴィダの徹底的な守りにイングランドはなかなか攻めきれない。ケインも2度チャンスを逃した。

 後半クロアチアは、レビッチとペリシッチがサイドを替えて出てくる。これが効を奏しクロアチアのボールが自由に動き出す。ブルサリコからのクロスを足で合わせてペリシッチ、GOAL! イングランドの守備にほころびが出はじめたのをクロアチアの中盤は見逃さず、ゾンビのように次から次へと襲いかかる。最後の砦はキーパーのピックフォード。W杯初出場の24歳がファインセーブを見せるとアナウンサーは’Brick Wall' と絶叫する。拮抗する状態で延長戦へ。最後に決めたのはマンジュキッチ。今大会不発と言われてきたエースが最後に根性を見せた。
ピックフォード
    マンジュキッチに決められた後のピックフォード

 クロアチアのダイナモ、モドリッチはこの試合で得点には絡まなかったが、中盤を撹乱した。通算出場時間604分、全出場選手で最長。決勝戦には万全の体調で活躍して欲しい。その華奢な体でゴールを決めてくれたら、もう最高だ。
modoricKane
    薄いモドリッチとゴツいケイン。真ん中の女子は一生自慢できますね

 クロアチアの走行距離は143.28km。驚いちゃいけない。イングランドは147.82kmだ。両チームとも体力の最後の一滴までよく走った。Sleep well!
眠るクロアチア
   クロアチア選手の気持ち。わかるなあ

客席にミックジャガーの姿があった。彼が応援するチームは負けるというジンクスがある。イングランドファンが、ミックが間違えて?この日にいてくれてよかったと騒いでいる。
 
7月10日 アンチ・フットボールで勝った
フランスーベルギー 1−0

 最初の15分が最も面白かった。ボールが早い。ベルギーが両横から攻める。フランスもカンテが刈ったボールをグリーズマン、ポグバにつなぐ。エムバペがペナルティエリアに走り込むもクルトワにかわされる。
エムバペ回転
   
 後半コーナーからのボールをDFウンティティがゴールに決めてからは、フランスは守りに徹する。最後の10分間、グリーズマンは相手が保持するボールを取り上げるわけでもなく原っぱを走る犬のように追いかける。一見ムダに見える走行が効いていたと今あらためて感じる。勝つということ。試合後マルティネス監督は語る「ボールが死んでいた」。「僕はあんなフランス代表の一員として勝つくらいならばベルギー代表の一員として負けた方がいい」とアザール。何度もファインセーブを見せたクルトワも「フランスはアンチ・フットボールで臨んできた」と相手の戦術を批判する。
アザール
   負けても誇らしげな主将アザール

 冷静なクルトワが感情をあらわにするのは珍しい。フランスで中盤のボールを刈って回ったのは、名ボランチのカンテ。シュートを試みるが何度も外し後半はディフェンスに徹したストライカー(であるはずの)ジルー。二人ともクルトワが所属するチェルシーの同僚だ。ふだん見ない、見たくないサッカーをクルトワはこの試合で体験してしまった。ちなみにオールフランスで倒して倒して止めにかかったアザールもチェルシーの人だ。

 ジルーは、エムバペがヒールパスで出した絶好の機会を外したことを先頭に、ネットで大炎上中だ。勝ったチーム所属なのに。●ジルーはこのW杯で7時間もピッチに立っているのに一発も枠内に入ってない●ジルーはジョークだ●ジルーは決勝戦で得点するために、今まで全てわざと外している●フランスの子供がテキストするときに使う用語。OMG=Our Man Giroud●ジルーはサンダルを履いてプレイしていたようだ●ジルーとベンゼマ(レアルマドリーのストライカー。恐喝事件を起こした疑惑がありこのW杯には召集されていない)はこのW杯で同じスコア数だ(=ゼロ)。このあたりにしておくが、彼はチェルシーに戻ってからも当分イジられることは間違いない。
ジルーとウンティティ
   得点したウンティティにキスするジルー。これも炎上中

 アンリは、試合後デシャン監督に祝福のハグをする。ベルギーのコーチでもある彼は、心の中だけで微笑んでいる。
アンリとデシャン



 



 
7月7日 今なぜイブラ対ベッカム?
スウェーデンーイングランド 0−2

 シンプルなゲームだった。先制点を取って盤石の試合運びを見せるイングランドとロングパスに頼るだけのスウェーデン。主将ケインをペナルティーゾーンで見る回数も少なく、より多くのプレイヤーに機会を与えていたように見える。実際ゴールゲッターは、初代表のDFマグワイアと22歳のMFデレ・アリ。後半の交代投入は、デルフ、ダイアー、そして20歳のラッシュフォード。もうテストマッチのノリである。
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    先制ヘディングを決めたマグワイア(右)とストーンズ(23歳)
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   後半14分にダメ押しのゴールを決めたデレ・アリ
 
 そんな試合の裏で、両チームの先輩たちが火花を散らしていたことをご存知だろうか。ことはイブラヒモビッチがベッカムに対して送ったツイートから始まった。「Yo、ベッカム!もし、イングランドが勝ったら、俺は君がディナーを奢るぜ。世界中のなんでもいい。でも、もしもスウェーデンが勝ったなら俺が欲しいIKEAの商品を何でも買ってくれ。OK?」

 対するベッカムは「イブラヒモビッチ、もしスウェーデンが勝ったら君がLAギャラクシー生活で住むマンションに必要な全てをIKEAで買ってやる。でもイングランドが勝ったら、君にイングランドのゲームを見てほしい。イングランドのユニフォームを着てウェンブリー競技場で。そしてハーフタイムにはフィッシュ&チップスを楽しむんだぜ」そんなカケが始まったわけだ。

 
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 なぜベッカムがイブラのイングランド体験にこだわったか。理由は2012年11月14日に遡る。この日スウェーデンーイングランドの親善試合が開かれた。結果はイブラ一人に4点取られて負けるという歴史的屈辱もの。それだけにベッカムは、再びイングランドの負けを期待するイブラにひと泡吹かせたかったのだろう。
 
 そしてイングランドは勝った。普段の70%の力で。イブラがウェンブリーでフィッシュ&チップスをつまんでいる姿を見てみたい気もする。

 おっと、またサウスゲート監督について書く機会を逸してしまった。続きは次回。

最後はPK戦。見ている方もぐったり。クロアチアは次のイングランド戦まで回復できるだろうか。
 
7月7日 史上最弱のホスト国で光ったブラジルのプライド
ロシアークロアチア 2−2(PK3−4)

 FIFAランキング70位、ノーマークからベスト8まで勝ち上がった開催国ロシアと、20年ぶりにベスト4進出をねらうクロアチア。肉弾が骨を叩き割るような試合だった。

 パワーでガンガン来るロシアを、老獪にかわしていくクロアチア。華奢なカラダで走る10人にはもう限界がきている。延長20分。1−2。もうこのまま終わらせてクロアチア勝ちでいいじゃん、と思ったところにFKからのクロスをノーマークだったマリオ・フェルナンデスが頭で決めて2−2へ。ロシアの意地を感じた一瞬。めげることなくクロアチアの熟練キーパー、スバシッチが大声でチームにハッパをかける。試合は両軍共避けたかったPK戦へ。
走るクロアチア
     
試合後よろこびを爆発させるクロアチア。痩せてます

 5人がフルに蹴るPK戦。ロシア3人目のフェルナンデスは枠外に外してしまう。彼は勝つために決めたゴールより、外したPKで覚えられるかもしれない。
フェルナンデス
できれば、これを読むあなたには違う事実で覚えて欲しい。フェルナンデスは元グレミオでプレイしていたブラジル人。18歳でグレミオと契約するが、すぐ競技場を抜け出す。3日後に見つかった時は空腹で死にそうで、おまけに鬱病になりかけていた。2014年10月のキリンカップでブラジル代表としてデビューを飾るが当時の所属はもうCSKモスクワ。2017年10月からロシア代表になる。この日もパスの成功数も彼が一番多く、縦横無尽の働きだった。189cmの長身で繊細な心をもつDF。これからもロシアの右サイドバックとして活躍してほしい。
抱きつくモドリッチ
   ゲームが終わって、スバシッチに抱きつくモドリッチ。2戦連続これ

 おまけ。現場にはクロアチア大統領、グラバル=キタロヴィッチも応援に来ていた。美人ですね。
大統領



 

 
 


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