カテゴリ: サッカー

 いやはやプレミアリーグファンには、世の中に確実なことなどない!と断言できる一年でした。レスターが優勝するなんて。Chelseaサポーター歴の長い私ですが、去年の9月までLeicesterという単語を知らなくてイギリス人に「ここんところ勝ち続けているLeicesterって、どう発音するの?」と聞いておお、我らが岡崎選手の所属するレスターだと気がついたんですよ。ゴメンなさい、岡崎さん。
 
 5月3日早朝。Chelsea - Spursの試合を後半から観ました。Spursはこの試合に勝てば今シーズンの優勝も標的内なのでファウルも辞さない必死の攻めでしたが、Chelsea頑張った。レスターの監督ラニエリは元Chelseaの監督だったから、自分たちは勝てない今シーズン、どうせならSpursよりChelseaに勝たせてやろうぜ的マインドがChelsea選手にもサポーターにもにあったのかもしれませんね。不調と言われていたアザールのゴールが、レスターの優勝を決めたのもよかった。

 早朝からBBCそしてCNNまでもトップニュースが、Chelseaの単語から始まるレスターのミラクル優勝。画面タイトルにFOXESとあるのは、レスターのロゴキャラクターにあるキツネからの愛称です。
僧侶

 さて見出しにもあるように、なぜタイ人が喜ぶか。について考えてみました。 私、レスターというチームに関しては知らなかったけれど、KING POWERのユニフォームについては認識がありました。ChelseaやManchester City, Manchester Unitedの試合を観ていてその対戦相手が着ているユニについてるロゴとして認識していたというのが正しい記述かな。
th-2(写真は、岡崎が今年3月見事なオーバーヘットを決めた直後のもの)
このKING POWERは、タイ一の免税店を運営する会社です。バンコクのスワンナプーム空港を利用する方にはおなじみのブランドですな。因みに社長のヴィッチャイ氏はタイで4位のお金持ち(2016 Forbes調べ)。

 私の支持するChelseaもタイのSINGHA BEERがスポンサーの一つ。ロンドンのStamford Bridgeで観戦するときはいつも「なんで寒いロンドンまで来て、シンハビール飲まなくちゃいかんねん?」とブツブツ言いながら飲んでます。

 じつは元首相のタクシン氏も2007年にManchester Cityのオーナーになったことがあった。2006年9月の軍事クーデターで失脚したタクシン氏は、タイで圧倒的な人気を誇るプレミアリーグのクラブのオーナーとなることで、タイ国民への影響力を維持することを狙ったのです。残念ながらこのオーナーシップは1年で終わっちゃいましたが。

 タイにおいては、国内で何かをするよりプレミアリーグにお金をかける方が、よほどブランドイメージ管理に役立つということ。それほどタイ人はプレミアリーグを観ているということでもあります。テレビで取材を受けている僧侶まで、レスターの優勝を喜ぶなんてなんか面白いでしょ。エロやバイオレンスでは届かないところまでカバーできる
超優良コンテンツ。

 ちなみにKING POWERでお金を一番使っているのは、中国人(昔は日本人だったなあ。遠い目。この旧ロゴは見覚えありのかたも多いのでは?)。king-power-logo
中国人のお金がタイを経由してレスターをプレミアリーグを支えて、最後にタイ人がハッピーになるとは経済の皮肉、いえ素晴らしささえ感じます。

 釣りではなく、カバー写真は、大英帝国が誇る元イギリス代表ゲイリー・リネカー。若いころレスターでプレイしていました。昨年12月彼がBBCでコメンテーターを務める番組で 「もしレスターが優勝したら、来季の最初の番組にパンツ一丁で出演する」と言ったもんだから、このどこぞのコラ職人が手がけたビジュアルが今になってイギリスのSNS内で話題です。リネカーも彼自身のTwitterで後悔?してますね。いやあ、期待したい。
 
 レスター、世界中を沸かしてくれました。ありがとう。adidasじゃないけど、
Impossible is Nothing.


 

 昨夜は6:45からマンチェスターシティ対トットナム を観た。久々に平和な土曜でテレビの前に正座して観戦。素晴らしいことに、シティ所属ウルトラマン頭のアグエロが4点(うち2点はPK)も決めてくれちゃいました。一度の試合で一人の選手が3点決めるとハットトリックというが、4点に関してはそういう単語はないみたい(誰かご存知の方がいたら教えてください)。
 この日のアグエロ、運がよければあと1PK、1ゴール計6点決めてたであろうほどのキレッキレぶり。6点決めることをダブルハットトリックというらしいが、さすがにプレミア級プロのレベルだと前例はないとみた。今朝のイギリスの新聞に、アグエロはPKでのハットトリックを狙えたのに逃して惜しいと書いてあったのには笑った。
 4点。デジャブ...そう、10月14日火曜日に シンガポールで見たばかり。日本−ブラジル戦でネイマールがやらかしてくれたんだった。日本ーネイマール戦と記すほうが正しい、一見ネイマールによるネイマールのための試合でしたね。まるでブラジルW杯の鬱憤をはらすような。シンガポールナショナルスタジアム、日本応援の方が多いかなと思ったら、ネイマールが1点決めてからはスタジアムの声援がブラジル寄りになっちゃって、ちょっと参った。
 ブラジルからはワールドカップごとに雨後のタケノコのように新しい才能が出て来てうらやましいと思っていたが、この日のネイマールを見ていてその感を強くした。ブラジルの才能といえばペレやジーコが筆頭だろうが残念なことに、私は彼らの生のプレイを見ていない。その後ロマーリオという我がまま名人や、戦車のようにゴーッと来て点を入れるロナウドとか、左右の足をクネクネ駆使してアートのような不思議なゴールを量産したロナウジーニョといったファンタジスタを思い出す。しかし、このネイマールはちょっと違う。その”場”にいてくれる選手(写真はサッカーキングさんより)
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 思い出してほしい、むかし中田ヒデがキラーパスなるものを放ったが殆どはこれに追いつく日本選手がいなくてムダに終わったことを。ネイマールの場合は、このキラーパスが放たれる場所に必ずいるので、キラーというより普通のパスのように見えて彼がゴールを決めてくれる。はずすということがほぼないのも、日本選手との大きな違いだ。
 残り10人の選手も彼を信じて彼のお膳立てをする。この日の試合はネイマール劇場と呼ばれていたが、彼一人ではおそらくダメ。後半で退場してしまったが、いまチェルシーに所属しているオスカルという選手はもしかしてブラジル初(失礼!)の知能派と思っているのだが、彼が前半見事にネイマールにボールを集めるつなぎ役を果たしていた。後半は、皆さんもご存知のロビーニョや昔より1.3倍に肥大したカカがネイマール周りできれいにボールをさばいていた。
 ここにいてくれるといいんだけど、ここで決めてくれるといいんだけど、という場所で結果を出してくれるのが、4点の男というかエースとしての条件。たぶんこれは、サッカーに限らず私のいる広告業界にも言えることなんだろうけど。
 おっと話がそれちゃいました。しかしたった5日間に4点ゴールを2回を観た人も世の中にそんなにいないんじゃないのかしら。ラッキー♡
 おまけ。ハットトリックといえば、4試合連続ハット世界記録がギネスに記載されている男がいて、その男の名前はゴン中山こと中山雅史といいます。ネタとしてどうぞ。


 
  

あっという間の一か月でした。楽しかった。いまだ睡眠不足という余韻は残っていますが。
ひとつ発見だったのは、日本よりもべトナムでの視聴環境がよかったということ。がんばれニッポン!

7月14日 宴のあと。球をつかむ男たち

○ ドイツーアルゼンチン 1-0 リオデジャネイロ

 
宴が終わった。06,10年の脱力感を自分の中で反芻し危惧していたが、深夜2時からの試合を見て、通常通り会社に行くことができた。数日前のことなのに、もう一ヶ月ぐらい経った感がある。 

力が拮抗し攻めあぐねている試合だった。お願いだから延長戦-PK戦だけは避けてください神様と祈りながら見ていたのは私だけではあるまい。最初からドイツが優勝すると言い続けていたのでさしたる感動もなかった。ドイツ選手の奥様やガールフレンドは美人が多いなあと決勝点を決めたゲッツェと抱擁しあう彼女を見ていたりした。オヤジですみません。

 ゴールデングローブ賞をもらったのは、GKのノイアー。異議なし。MVPはメッシ。異議あり。もっとも一番疑問を感じていたのはメッシ本人だろうけれど。MVPもノイアーでよかったのではないだろうか。もっというと数人のGKにMVPをあげたい。

 コスタリカのナバス。PK戦までフルにもつれたオランダ戦での守りも凄かったが特筆すべきは決勝トーナメントの対ギリシャ戦だろう。120分の過酷な戦いで枠内シュート13本中12本を止め、PK戦でも1本止めてマン•オブ•ザ•マッチに選ばれた。セーブ率も91.3%と大会一だ。

 ベルギーのクルトワ。若い頃のジョージクルーニーのような顔つきでセーブ率85.7%。今期アトレチコ•マドリードをスペインリーグ優勝とチャンピオンズリーグ準優勝へと導いた陰役者である。120分の対アメリカ耐久戦で1点に抑えたのは素晴らしかった。このベルギーーアメリカ戦では、アメリカGKのハワードも壮絶だった。ベルギーにボコボコにされているという表現が適切なビッグセーブ連発で オバマ大統領が絶賛していたほど。実際セーブ数28(!),失点6 のセーブ率82.4%。

 メキシコのオチョアもよかった。スノボ選手のような容貌で、と真正面でたまたまそこにいた風情でボールをはじく(6月17日ブラジルーメキシコ戦参照。他のGKならブラジルは3点取れていた)。動体視力がいいのだろう、ゴールエリアという狭い空間でシュアな動きをしていた。それに対しノイアーの動きは特異だ。 選手のポジショニングをヒートマップで記録しているオプタ スポーツによると、ノイアーは今大会、19回ペナルティーエリア外でボールに触れている。リベロのようなGK。通称Sweeper-Keeper。DFの中に飛び込んでスウィーピングができるのは、もともとDFからスタートした彼のキャリアによるところが大きい。

 そもそも今回なぜGKのセーブ率が注目を浴びたのか。それはシュートの数が多かったから。ベスト8が揃うまでの56試合で154ゴールが生まれ、すでに過去2大会の総得点を上回っている。

 なぜゴールが多産されたのか。今までのボールは12-16枚のパネルで構成されたのに対し、今回のアディダス公式球「ブラズーカ」はたった6枚のパネルを溶接(今までは手縫いだった!)しているため、接合部分が少なく水を吸いにくい。雨の試合でも、点が入っていたのはそういうことだ。PK専門のGKが話題になったのもご愛嬌だが、GK 注目の陰にテクノロジーがあるのは、実に今っぽい。

 と書いてみたものの私は球を掴む男たちよりも、蹴る男に注目したい。ネイマール、そして今回一押しのコロンビアのロドリゲス、彼らはきっとロシアでも活躍してくれるに違いない。4年なんてあっという間だ。

 

 一ヶ月間おつきあいいただきありがとうございました。今回はいつものように毎日更新できなかったのが心残りです。まだネタはあるんだけど。いつか、どこかで語りたいですね。



7月13日 飛躍と衰退は同時に。

○ブラジルーオランダ 0-3 ブラジリア

○3位決定戦 ブラジルードイツ   1-7 ベロオリゾンテ(7月8日)

 

 ブラジルにいったい何が起きちゃったんだろう。明け方試合を見終わって、いや7月8日ドイツに7-1でブラジルが致命的大敗をくらってからずっと頭の片隅に巣食っていた疑問がむくむく肥大する。このもやもやを放っておくままW杯が終わると気持ちが悪い。2つの仮説を立ててみた。

 2002年13/23。06年3/23,、10年3/23,、14年4/23,。何の数字かおわかりだろうか。ブラジル代表23人中、コリンチャンスやサンパウロ、フラメンゴなど南米のクラブでプレイする選手の割合である。南米所属が13人いた2002年日韓大会で、ブラジルは優勝。この時キラ星のごとく活躍した選手だったジウベルト・シルバはアーセナルへ、カカはACミランへ。そしておばさん頭とちょっぴり出っ歯が愛らしかったロナウジーニョはバルサへと、W杯後ヨーロッパの大クラブへ移籍を遂げる。彼らにとってW杯は、移籍を、大金を手中にするための踏み台だった。

 06年ドイツ、10年南ア、14年ブラジル。3大会ともスター選手を揃えるブラジルだけに下馬評は高かったが、結果を出せずに終わる。上述の数字が示すように殆どの選手がすでに大クラブでプレイしている状態は、もう人参というエサがないことを意味する(因みにネイマールは2013年にサントスからバルサへと移籍済み)。さらに昨今のヨーロッパクラブリーグの強行スケジュールだと、ブラジル代表として顔を突き合わせる時間がない。もともとサッカーはカラダに染み付いた習慣であり考えるものではない(失礼!)彼らからすれば、日頃プレイを見てない同僚たちとチームを組み立てることは難儀だろう。監督がそういうことに得意な人であれば別だけど。

 そこで監督である。今回の監督はスコラーリ。02年はロナウド、リバウド、ロナウジーニョといったファンタジスタを生かした攻撃でブラジルを優勝に導いた名将である。その後ポルトガル代表監督に就任。EURO2004ではチームを準優勝させた。当時のポルトガルにはデコ、ルイコスタ、そして出てきたてのクリスチアーノ・ロナウドがいた。つまり芸術的な技術でボールを操りゲームまで創りだすファンタジスタ、とそれをサポートする選手がいるチームなら彼は指揮をとりやすいわけだ。2008年から09年にかけ、彼はプレミアリーグのチェルシーの監督になる。モウリーニョの戦略、戦術に慣れていた選手たちは、スコラーリの戦略のなさ、練習の単調さに不満を持ち、ドログバやテリーは改善を求める。その後成績悪化からシーズン途中での解任。圧倒的なタレントがいないチームでは、彼は弱い。

 そう考えると、ネイマールを欠いたドイツ戦、オランダ戦でいとも簡単に負けたことがすとんと腑に落ちる。

 ただオランダ戦で3分目のPKはブラジルにとって不幸だった。ロッベンのダイブはペナルティーエリア外だったのに。オスカルのイエローは不運だった。明らかにダレイプリントに足をかけられたのに。終了直前にオランダのGKシレッセンが第3GKフォルムに交代。オランダW杯登録23人全選手出場という思い出作りの舞台にされたこともブラジルにとって屈辱だった。これだけの不幸が重なることもそうあるまい。危機は、よい状態に向かうための機会でもある。数年前のカンヌ広告祭で元アメリカ副大統領がそう言っていたことを思い出した。ブラジルなら大丈夫。ユニフォームを着てベンチ入りしていたネイマールが、次のW杯で頑張ってくれるはずだから。

オランダーアルゼンチン戦。凄い試合でしたがまだもやもやしています。
今日は4秒じゃわからず15秒ほどかかるかもしれません。すみません

 7月10日  PKとは何だろうーオランダの2試合を通じて
○準々決勝 オランダーコスタリカ  0-0(PK4-3)   サルバドール(7月5日)
○準決勝 オランダ-アルゼンチン 0-0(PK2-4)  サンパウロ(7月9日)

 PK戦はサッカーではないと言ったのは元日本代表監督のオシム氏。私には離婚調停のようなものに思える。かなりの極論だけど。当人同士で決着がつかないから客観的なルールで結論を出すが、負けた方は忸怩たるものを背負って行くし、勝った方も結果に安堵するがすっきりしない。   
 対アルゼンチン戦。オランダもアルゼンチンも攻めあぐねる展開で、湿気75%の空気と戦う選手たちの疲労は高まるばかり。延長30分の戦いが終わりPK戦が始まる前、テレビはオランダの控えGKクルルを映す。彼は数日前、PK戦に突入したオランダーコスタリカ戦(筆者個人的には2014W杯で見応えNO1の試合だった)で延長の終盤、PK戦になることを予測したファンハール監督が交代で入れたGK。正GKのシレセンがプロとしてPKを一回も止めたことがないからだ。クルルは期待を裏切ることなくコスタリカの2人を阻止し、オランダは勝つ。ファンハールは名将と称された。
 クルルのアップは「また彼に代えなくていいのか」というメッセージのように見えた。実際、先発GKのシレセンはアルゼンチンで蹴った4選手全員に決められ、オランダは負けた。試合後の質問でファンハール監督は、アルゼンチンGKロメロに阻まれたフラールとスナイデルをかばう。そして語る。「シレセンを代えるチャンスがあればそうしていた。でもすでに3人の交代枠を使っていたのでできなかった。PK戦で負けるというシナリオは最悪だ」と。
 シレセンの気持ちを思うと切なくなる。準々決勝、準決勝とも濃い内容で、彼は90分+30分を2試合分守り抜いたというのにそちらについては語られず、PKを一度も止めたことのないGKとして記憶されてしまう。次期マンUの監督に就任するファンハールは確かに名将だろう。でも名将ならPK戦に持ち込まないシナリオを書いて欲しかった。
 アルゼンチンに負けが決まった後、ロッベンはひとりオランダサポーター席に向かう。彼らに挨拶すると思いきや、最前列に座っていた奥さんと子どもをハグしたところでカメラは切り替えられた。

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