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11月30日はグループ第3戦で濃い試合ばかり。人間は眠らなければやっていけないことを、恨めしく思いました。この試合の裏では、ポーランドーアルゼンチン戦(0−2)をやっていました。体が一つしかないのも恨めしかったです。

11月30
日 Cの難度に泣いたオチョア
   サウジアラビア1ー2メキシコ

 メキシコといえばW杯の常連。2022年で8大会連続決勝トーナメント進出を狙っていたが、ここで断たれた。

 グループCは難度が高かった。1位抜け間違いなしと言われたFIFAランキング3位のアルゼンチンが、初戦で51位のサウジに敗れたことから混戦が始まる。そしてサウジはポーランドに負け、ポーランドはメキシコにスコアレスドロー。アルゼンチンはメキシコに勝ったことで、アルゼンチンだけちょっと高い4すくみの状態で迎えたのが11月30日の第3戦だった。

 メキシコは今回の
W杯で無得点が続いていた。やっとこの試合で、マルティンとチャベスのゴールで2点を獲得する。しかし得失点差で3位になる可能性があるため、主砲のヒメネスを後半20分過ぎに投入するが、怪我明けの彼は力を発揮できず。その後GKのオチョアはサウジに1点を許し、試合が終わった。2対1で勝ったというのに。
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オチョア2022


 
メキシコのGKといえばカンポスを思い出す。小さいのに手が長く、点取屋でもあった伝説のGK。かつメキシコの英雄。そのカンポスでもW杯は1998、2002、2006の3回しか出ていない。カーリーヘアでガムを噛み続けるオチョア(拙稿2014年を参照)は、ベンチ含めて2006年から今回まで5回W杯に出場し続けている。
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オチョア2006
今回、彼がカメラに長く映った瞬間は、11月27日のアルゼンチンーメキシコ戦。対メッシの1セーブ、1失点だった。Cグループより難易度の低いグループなら、もう少しガムを噛むオチョアを見ていられたと思うと、ちょっぴり切ない。
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オチョア2014

 

アルゼンチンが倒されるジャイアントキリングが、起きましたね。気がつくと途中からサウジアラビアを応援する私がいました。午前4時からのフランス2ー1オーストラリアも楽しい試合でした。しかし一晩に4試合はキツイ。眠いです。今晩の日本ードイツ戦までに昼寝しないと。

11月
22日 奇跡は、泥臭い戦略がテクノロジーを味方にして起きた。
 アルゼンチン1ー2サウジアラビア 

 アルゼンチン36試合無敗の記録がこんな形で終わるなんて、スタジアムの7割を占めるアルゼンチンサポーターは思いもしなかったろう。遥か格下のサウジアラビアに、しかも後半の8分間で2点も決められるとは。メッシのせいではない。彼は最初のPKを決めて役割を果たした。原因はアルゼンチン側に戦略がなかったことだ。

 サウジアラビアは、ハラハラするほど高いDFラインとコンパクトなプレスを維持した。そのトラップにまんまと引っかかったのがアルゼンチン。前半21分のメッシのゴールはオフサイドとなり、26分にラウタロ・マルティネスのドリブルからのシュートもVAR(Video Assistant Referee 半自動オフサイドシステム)で無効になった。オフサイドトラップは決して新しくない。
むしろ伝統的で泥臭い戦術だ。VARがなければオフサイドは見逃され、アルゼンチンは2点加算されていたに違いない。

 1点先制で後半も熱く応援していたアルゼンチンサポーターは、開始8分間で冷凍庫に追いやられる。3分にサウジのアルシェハリ、8分にアルダウサリが連続してゴールを決める。それまで静かだったサウジサポーターが雄叫びを上げる。スタジアムの3割しか占めていない緑エリアが拡大したようだ。サウジGKのアルオワイスが立て続けに見せたファインセーブも、彼らの燃料となった。
サウジサポーター

 陣地に座って苦虫を噛み潰していたアルゼンチン監督のスカロー二が何をしたかというと、後半14分に選手を3人交代。ベテラン勢を下げ、代表歴が短くW杯初出場の若手を投入した。空気を変えたかったのだろうが、メッシの溜息が画面越しでもわかった。それを見てさらに焦ったのか、監督はメッシと同じスペインリーグで戦うアクーニャを26分に出場させる。W杯出場5回目のメッシとベテランのディ・マリアに全てを丸投げしてきた監督には、それしかなす術はなかった。

 他方、サウジ監督のルナールは、後半フィールドの外を白シャツで歩き回り選手にハッパをかけ続けた。
ルナール2022

ルナール2022
2018年にモロッコの代表監督としてロシアW杯デビューしたルナール、俳優顔負けのイケメンぶりで有名になったが、グループリーグ敗退となり戦績は残せなかった。モロッコの前もザンビア、アンゴラといったアフリカ諸国の代表監督を歴任していたため、地を這う型の戦略には慣れている。
地道に仕掛けた”オフサイドトラップ”が、先進のVARにサポートされることまで読んでいたかは知らないが。
ルナール2018

ルナール2018サービスカット)
 警告。同じグループCのメキシコーポーランド戦は拮抗した。両チームが繰り返す猛攻が点にならなかったのは、双方の守護神キーパー、オチョアとシュチェスニーが重ねた奇跡的なセーブによる。スカローニ監督はアルゼンチンとの契約が2026まで延長になったと聞いたが、それは保証されたものではないことをグループリーグのうちに知るべきだろう。
 

ブラジルが勝ちました。次はブラジルーベルギー。これを制したチームが優勝するかも。
 
7月2日 転がるし、泣く。でも奴はそこにいる
ブラジルーメキシコ 2−0

 前半を見る限りではメキシコはいいサッカーをしていた。データをインプットされていたのか、ブラジルのチャンスをことごとく潰していく。それでも時々ゴールを襲うシュートを、キーパーのオチョアはファインセーブ。見ると嬉しいが、それはメキシコの劣勢をも意味する。おっと。気がついたら自分はメキシコを応援しているじゃないか。

 同じことがピッチでも起こっていた。ブラジルの選手がボールを持つと、もの凄いブーイングが起こる。特に6番フェリペルイスとネイマールがボールを持った時。9番のジェズス(Jesus。イエスキリストか)はマンCのエース候補。21歳。地鳴りのようなブーに、もともとの泣き顔がもっと泣きそうになっている。
ジェズス
    これがジェズスの地顔である

原因はネイマールの演技だ。「彼にオスカーを!」自国のブラジルでさえ匙を投げつつある。
rollingneymar
    ネイマールコレクション

 後半メキシコにラジュンが入ってから流れが変わる。ネイマールとラジュンのマッチアップが増えて、転がる暇がなくなった。ネイマールは彼を避けて右に左に動く。チャンスは静かに訪れた。中盤でネイマールがヒールパスを出す。それを受けたウィリアンがアジャラを交わして上がりペナルティエリア左からクロスを送る。泣き顔ジェズスが足を延ばすが、届かない。惜しい!と思いきや、ネイマールがちょんと足を出した。GOOOOOOOOAL!!! いつの間にかヤツはそこにいた。
ネイマールゴール
   蹴ったボールを確認するネイマール

 その後投入された20番フィルミーノがきちんと仕事をする。後半43分、ネイマールが撃ってオチョアに弾かれた球を、走りこんできたフィルミーノがゴールへ押し込む。冷静に、着実に。不敵に笑うネイマール。腐っても鯛。そんなことわざを久々に思い出した。
フィルミーノ♡
  うまいプレーヤー。だがこのポーズはちょっと(苦笑)


あっという間の一か月でした。楽しかった。いまだ睡眠不足という余韻は残っていますが。
ひとつ発見だったのは、日本よりもべトナムでの視聴環境がよかったということ。がんばれニッポン!

7月14日 宴のあと。球をつかむ男たち

○ ドイツーアルゼンチン 1-0 リオデジャネイロ

 
宴が終わった。06,10年の脱力感を自分の中で反芻し危惧していたが、深夜2時からの試合を見て、通常通り会社に行くことができた。数日前のことなのに、もう一ヶ月ぐらい経った感がある。 

力が拮抗し攻めあぐねている試合だった。お願いだから延長戦-PK戦だけは避けてください神様と祈りながら見ていたのは私だけではあるまい。最初からドイツが優勝すると言い続けていたのでさしたる感動もなかった。ドイツ選手の奥様やガールフレンドは美人が多いなあと決勝点を決めたゲッツェと抱擁しあう彼女を見ていたりした。オヤジですみません。

 ゴールデングローブ賞をもらったのは、GKのノイアー。異議なし。MVPはメッシ。異議あり。もっとも一番疑問を感じていたのはメッシ本人だろうけれど。MVPもノイアーでよかったのではないだろうか。もっというと数人のGKにMVPをあげたい。

 コスタリカのナバス。PK戦までフルにもつれたオランダ戦での守りも凄かったが特筆すべきは決勝トーナメントの対ギリシャ戦だろう。120分の過酷な戦いで枠内シュート13本中12本を止め、PK戦でも1本止めてマン•オブ•ザ•マッチに選ばれた。セーブ率も91.3%と大会一だ。

 ベルギーのクルトワ。若い頃のジョージクルーニーのような顔つきでセーブ率85.7%。今期アトレチコ•マドリードをスペインリーグ優勝とチャンピオンズリーグ準優勝へと導いた陰役者である。120分の対アメリカ耐久戦で1点に抑えたのは素晴らしかった。このベルギーーアメリカ戦では、アメリカGKのハワードも壮絶だった。ベルギーにボコボコにされているという表現が適切なビッグセーブ連発で オバマ大統領が絶賛していたほど。実際セーブ数28(!),失点6 のセーブ率82.4%。

 メキシコのオチョアもよかった。スノボ選手のような容貌で、と真正面でたまたまそこにいた風情でボールをはじく(6月17日ブラジルーメキシコ戦参照。他のGKならブラジルは3点取れていた)。動体視力がいいのだろう、ゴールエリアという狭い空間でシュアな動きをしていた。それに対しノイアーの動きは特異だ。 選手のポジショニングをヒートマップで記録しているオプタ スポーツによると、ノイアーは今大会、19回ペナルティーエリア外でボールに触れている。リベロのようなGK。通称Sweeper-Keeper。DFの中に飛び込んでスウィーピングができるのは、もともとDFからスタートした彼のキャリアによるところが大きい。

 そもそも今回なぜGKのセーブ率が注目を浴びたのか。それはシュートの数が多かったから。ベスト8が揃うまでの56試合で154ゴールが生まれ、すでに過去2大会の総得点を上回っている。

 なぜゴールが多産されたのか。今までのボールは12-16枚のパネルで構成されたのに対し、今回のアディダス公式球「ブラズーカ」はたった6枚のパネルを溶接(今までは手縫いだった!)しているため、接合部分が少なく水を吸いにくい。雨の試合でも、点が入っていたのはそういうことだ。PK専門のGKが話題になったのもご愛嬌だが、GK 注目の陰にテクノロジーがあるのは、実に今っぽい。

 と書いてみたものの私は球を掴む男たちよりも、蹴る男に注目したい。ネイマール、そして今回一押しのコロンビアのロドリゲス、彼らはきっとロシアでも活躍してくれるに違いない。4年なんてあっという間だ。

 

 一ヶ月間おつきあいいただきありがとうございました。今回はいつものように毎日更新できなかったのが心残りです。まだネタはあるんだけど。いつか、どこかで語りたいですね。

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