タグ:クルトワ

客席にミックジャガーの姿があった。彼が応援するチームは負けるというジンクスがある。イングランドファンが、ミックが間違えて?この日にいてくれてよかったと騒いでいる。
 
7月10日 アンチ・フットボールで勝った
フランスーベルギー 1−0

 最初の15分が最も面白かった。ボールが早い。ベルギーが両横から攻める。フランスもカンテが刈ったボールをグリーズマン、ポグバにつなぐ。エムバペがペナルティエリアに走り込むもクルトワにかわされる。
エムバペ回転
   
 後半コーナーからのボールをDFウンティティがゴールに決めてからは、フランスは守りに徹する。最後の10分間、グリーズマンは相手が保持するボールを取り上げるわけでもなく原っぱを走る犬のように追いかける。一見ムダに見える走行が効いていたと今あらためて感じる。勝つということ。試合後マルティネス監督は語る「ボールが死んでいた」。「僕はあんなフランス代表の一員として勝つくらいならばベルギー代表の一員として負けた方がいい」とアザール。何度もファインセーブを見せたクルトワも「フランスはアンチ・フットボールで臨んできた」と相手の戦術を批判する。
アザール
   負けても誇らしげな主将アザール

 冷静なクルトワが感情をあらわにするのは珍しい。フランスで中盤のボールを刈って回ったのは、名ボランチのカンテ。シュートを試みるが何度も外し後半はディフェンスに徹したストライカー(であるはずの)ジルー。二人ともクルトワが所属するチェルシーの同僚だ。ふだん見ない、見たくないサッカーをクルトワはこの試合で体験してしまった。ちなみにオールフランスで倒して倒して止めにかかったアザールもチェルシーの人だ。

 ジルーは、エムバペがヒールパスで出した絶好の機会を外したことを先頭に、ネットで大炎上中だ。勝ったチーム所属なのに。●ジルーはこのW杯で7時間もピッチに立っているのに一発も枠内に入ってない●ジルーはジョークだ●ジルーは決勝戦で得点するために、今まで全てわざと外している●フランスの子供がテキストするときに使う用語。OMG=Our Man Giroud●ジルーはサンダルを履いてプレイしていたようだ●ジルーとベンゼマ(レアルマドリーのストライカー。恐喝事件を起こした疑惑がありこのW杯には召集されていない)はこのW杯で同じスコア数だ(=ゼロ)。このあたりにしておくが、彼はチェルシーに戻ってからも当分イジられることは間違いない。
ジルーとウンティティ
   得点したウンティティにキスするジルー。これも炎上中

 アンリは、試合後デシャン監督に祝福のハグをする。ベルギーのコーチでもある彼は、心の中だけで微笑んでいる。
アンリとデシャン



 


ドイツ、勝ちましたね。流石だ。しかしベルギーを忘れてはいけないと思って。

6月22日 地味にモノ凄く強いベルギー
ベルギーーチュニジア 5ー2

 チェルシーつまりプレミアリーグファンの私からすると、ベルギー勝利は至極当然に見えるのだ。2点決めたアザールと何度もゴールを守ったキーパー、クルトワはチェルシー。やはり2点ゲットしたルカクは元チェルシーで今マンU、鉄のDFコンビ、アルデルバイレルトとベルトンゲンはトットナム、途中何度もボールを拾っては回しクロスを正確に決める白い7番デブライネはマンC、と11人中6人がプレミアの上位チームメンバー。先日のイングランドーチュニジア戦より楽に観戦することができました。結果5−2。これだけゴールが決まると痛快としか言いようがない。
 ルカク
         
2点目をいとも簡単に決めるルカク


 今年のベルギーがプレミア勢に偏る傾向があるのは、監督マルチネスの経歴によるところが大きい。彼はスウォンジー、ウィガン、エヴァートンの監督を経て2016年8月よりベルギー代表監督に就任。長いプレミア監督時代にいい選手は知り尽くしている。アザール中心のチームが今までになく強いのはもっともなのである。
マルチネス監督


 アザールとともに「レッドデビルズ」を支える守りの要、コンパニ(彼はマンC)が出場していない試合で、この強さ。ベルギーの優勝もないわけではない。

 なおアザールが前半6分にPKを決めて、開幕戦からの連続ゴールは27試合となった。これは、1954年スイス大会の26試合を上回って新記録。これはこれで地味に凄い。

アザール
         おちゃめ、でも今年はキャプテン


 

 



        

    

        
 


あっという間の一か月でした。楽しかった。いまだ睡眠不足という余韻は残っていますが。
ひとつ発見だったのは、日本よりもべトナムでの視聴環境がよかったということ。がんばれニッポン!

7月14日 宴のあと。球をつかむ男たち

○ ドイツーアルゼンチン 1-0 リオデジャネイロ

 
宴が終わった。06,10年の脱力感を自分の中で反芻し危惧していたが、深夜2時からの試合を見て、通常通り会社に行くことができた。数日前のことなのに、もう一ヶ月ぐらい経った感がある。 

力が拮抗し攻めあぐねている試合だった。お願いだから延長戦-PK戦だけは避けてください神様と祈りながら見ていたのは私だけではあるまい。最初からドイツが優勝すると言い続けていたのでさしたる感動もなかった。ドイツ選手の奥様やガールフレンドは美人が多いなあと決勝点を決めたゲッツェと抱擁しあう彼女を見ていたりした。オヤジですみません。

 ゴールデングローブ賞をもらったのは、GKのノイアー。異議なし。MVPはメッシ。異議あり。もっとも一番疑問を感じていたのはメッシ本人だろうけれど。MVPもノイアーでよかったのではないだろうか。もっというと数人のGKにMVPをあげたい。

 コスタリカのナバス。PK戦までフルにもつれたオランダ戦での守りも凄かったが特筆すべきは決勝トーナメントの対ギリシャ戦だろう。120分の過酷な戦いで枠内シュート13本中12本を止め、PK戦でも1本止めてマン•オブ•ザ•マッチに選ばれた。セーブ率も91.3%と大会一だ。

 ベルギーのクルトワ。若い頃のジョージクルーニーのような顔つきでセーブ率85.7%。今期アトレチコ•マドリードをスペインリーグ優勝とチャンピオンズリーグ準優勝へと導いた陰役者である。120分の対アメリカ耐久戦で1点に抑えたのは素晴らしかった。このベルギーーアメリカ戦では、アメリカGKのハワードも壮絶だった。ベルギーにボコボコにされているという表現が適切なビッグセーブ連発で オバマ大統領が絶賛していたほど。実際セーブ数28(!),失点6 のセーブ率82.4%。

 メキシコのオチョアもよかった。スノボ選手のような容貌で、と真正面でたまたまそこにいた風情でボールをはじく(6月17日ブラジルーメキシコ戦参照。他のGKならブラジルは3点取れていた)。動体視力がいいのだろう、ゴールエリアという狭い空間でシュアな動きをしていた。それに対しノイアーの動きは特異だ。 選手のポジショニングをヒートマップで記録しているオプタ スポーツによると、ノイアーは今大会、19回ペナルティーエリア外でボールに触れている。リベロのようなGK。通称Sweeper-Keeper。DFの中に飛び込んでスウィーピングができるのは、もともとDFからスタートした彼のキャリアによるところが大きい。

 そもそも今回なぜGKのセーブ率が注目を浴びたのか。それはシュートの数が多かったから。ベスト8が揃うまでの56試合で154ゴールが生まれ、すでに過去2大会の総得点を上回っている。

 なぜゴールが多産されたのか。今までのボールは12-16枚のパネルで構成されたのに対し、今回のアディダス公式球「ブラズーカ」はたった6枚のパネルを溶接(今までは手縫いだった!)しているため、接合部分が少なく水を吸いにくい。雨の試合でも、点が入っていたのはそういうことだ。PK専門のGKが話題になったのもご愛嬌だが、GK 注目の陰にテクノロジーがあるのは、実に今っぽい。

 と書いてみたものの私は球を掴む男たちよりも、蹴る男に注目したい。ネイマール、そして今回一押しのコロンビアのロドリゲス、彼らはきっとロシアでも活躍してくれるに違いない。4年なんてあっという間だ。

 

 一ヶ月間おつきあいいただきありがとうございました。今回はいつものように毎日更新できなかったのが心残りです。まだネタはあるんだけど。いつか、どこかで語りたいですね。

↑このページのトップヘ