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2日連続のジャイアントキリング。今度は我が日本です。まだ予選リーグの初戦ですが、日本のサッカーの歴史は変わり、そして子どもたちに夢と勇気を与えてくれました。もちろん私ももらいました。

11月
23日 4年前に負けたが勝ち
   ドイツ1ー2日本 

 試合直後に発行されたフランスのスポーツ紙レキップの見出しは「IPPON」。1点を取ったドイツのギュンドアンが頭を抱えて立ち尽くす写真にサラッと配置してある。フランスのこういうセンスが好きである。
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 試合前にAbemaのインタビューで「前回ロシアを離れた瞬間から僕はここを目指したし、1日も想像しなかった日、忘れた日はなかった」と真面目な顔で浅野は答えていた。「失うものはないから自分が持ってるものは全部出したい」と予告した通り、フィールドを陸上選手並みの速度で走り抜け、世界一のキーパー、ノイアーの動きを冷静に読んで、浅野は勝ち越しの2点目をふわっと決めた。
浅野と酒井
         試合後、喜ぶ浅野と酒井

 「(ロシアに)出られなかった悔しさと、負けてしまった悔しさを持ちながら4年間邁進してきて、海外で頑張ってきた」とコメントしたのは遠藤だ。彼は今日も”デュエル王”の名の通り、中盤でミュラーやムシアラ相手に1対1で体を張った。浅野と遠藤をここまで連れてきたのは、4年前にロシアまで行きながらピッチに立てなかった
悔しさだった。
 
 森保監督もW杯直前の強化試合カナダ戦で逆転負けし、采配をボロクソに言われていた。しかし今日の後半、交代で入った冨安、三笘、浅野、堂安、南野はどれもドンピシャだった。日本中の非難は、たった45分で彼への賞賛に代わった。

 ただ勝利への道を作ったのは、悔しさだけではない。数日前のNHKスペシャルでフランクフルトに所属する鎌田は「ドイツの戦術は予測できる。恐れることはない」と淡々とコメントしていた。遠藤はシュツットガルト、田中碧はデュッセルドルフ、堂安はフライブルク、浅野はボーフム、そしてキャプテンの吉田はシャルケでプレイする。つまり今の日本代表がミニブンデスリーガだったことがドイツの壁を低くした。

 そして今日、自らのミスからドイツにPKを与えてしまったキーパー権田が、後半ファインセーブを連発したことも忘れてはいけない。

 まだ初戦。浮かれてはいられない。この原稿は同じEグループのコスタリカースペイン戦を見ながら書いているが、午前1時35分現在スペインが3−0でリードしている。世界はまだまだ広くって強い(でも嬉しい)。
 

 まさかの敗戦。ドイツがW杯で初戦を落とすのは1982年以来です。前回王者がいきなり苦境に立たされた訳は。

6月17日 タブレットがもたらした勝利、的な。
ドイツーメキシコ 0−1 

 ドイツは当初、順調に見えた。エジルは素早くボールをさばく。クロースは前のめりに蹴る。いつも通りだ。20分時点でボール保持率は60:40。なのに我々は、ドイツのGKノイアーをすでに3度見ている。つまりドイツから一旦ボールを奪うと、メキシコは鋭いカウンターで斬り込んで相手ゴールをより脅かしている。前半35分の1点も、高速カウンターからエルナンデスがドリブルでボールを運び、ロサーノに渡したボールから生まれた。その間たったの11秒。凄い。全てがシナリオ通りに進行しているかに見える。
ロサーノ

 メキシコ国民は、W杯直前まで「こんな監督、クビにしろ」と言い続けたことを反省しなければいけない。なぜ彼らがオソリオ監督を嫌ったのか。メキシコの監督は国民みんなに夢を見させる人でなければいけない。それなのにオソリオは数字や戦略にこだわりすぎるんだ。それが彼らの言い分だった。

 W杯のIT化はビデオ判定だけではない。このロシア大会から電子機器が解禁され、各チームにタブレットが2台提供されている。1台はアナリストのブース。ここにはメディアが撮った生映像とそこから取れる試合データがザクっと送られてくる。そしてアナリストは、このデータから作った静止画と彼が書き込んだテキストを、ベンチにいるアシスタントコーチのタブレットに送り、無線通信またはチャットでやりとりできる。

 放送中、メキシコのアシスタントコーチが途中選手に何かを見せながら人差し指を動かしているシーンを2回見た。送られたデータを活用していたか定かではないが、タブレットを活用していることは伺える。”プロフェッサー”のあだ名を持つオソリオ監督にとって、タブレット解禁は渡りに船だったのではないか。
 
 ドイツの先発メンバー中、2014年のW杯経験者は8人、うち6人は10年も出場している。いわゆるレーブチルドレン。新しいメンバー、キミッヒもバイエルンミュンヘン所属だし、ベルナーは昨年のコンフェデ杯の得点王だ。全員のデータはダダ漏れ状態に等しい。オソリオは、この6ヶ月研究したしゴメスがラスト10分に投入されることも想定内だった、と試合後のインタビューで答えている。
オソリオ監督
       何回撮ってもドヤ顔しか捉えられず

 ドヤ顔で答えるオソリオと対照的なのは、試合終了後にチチャリートことエルナンデスが見せた涙。ここまでの道のりを想像させる。

チチャリート涙
       チチャリートか、いにしえの浜崎あゆみか

 交代でゴメスが入る時、ドイツのアシスタントが黒いファイルを開き、紙をめくって説明するのが見えた。そもそもデータの本格的活用は、2014年W杯前にドイツチームが情報処理大手SAPと一緒に開発したMatch Insightsなる分析システムが最初だというのに、なんと皮肉なことか。それほどレーブ監督には余裕がなかった。番狂せは楽しくて、切ない。

 






7月1日 ドイツはまだまだ

○ドイツ-アルジェリア 2-1 ポルトアレグレ


 ハノイからホーチミンに戻る飛行機で新聞を開くとレーム監督の「ドイツはまだまだ。これからエンジンをかけるんだ」というコメントが 目に飛び込んできた。ポルトガルを4-0で下し、ガーナとは引き分け、アメリカにも勝利。G組を余裕の一位で通過したチームの監督がこれだ。
 その晩の試合がアルジェリア戦。アルジェリアはオフサイドの判定を受けたゴールが1回、GKがノイアーでなければ得点したであろうシュートが2回。かなりの善戦である。結局スコアレスドローから延長戦へ。開始まもなくミュラーからのクロスにシューレがちょんと合わせ、92分にしてようやくの先制点。そこからがドイツの本領発揮。ボールをねちねち回しながら相手が反応してきたら、速攻をしかける。延長後半15分にミュラーとエジルがパスを繰り返し最後にエジルのゴール。2010年W杯はエジルのチームだったのに、今回は全く印象がなかった。4試合目にして僕らのエジルが(私だけかもしれませんが)帰って来ましたよ。控えにはシャルケの10番ドラクスラーやフライブルクの鉄のディフェンダーギンター(いずれも20歳)がいるし、ベテランのポドルスキ、クローゼも堂々の控えである。クローゼはシューレがゴールを決めたときベンチでカンガルーのように跳ねていた。これが3回目のW杯となるレーム監督にはまだまだ余裕が感じられる。

いやあ、サッカー、面白いですね。

6月17日  鉄板の強さとはこういうことか。

○ドイツーポルトガル 4-0 サルバドル

 
 
準優勝→3位→3位。そして2014年ブラジル。過去3回優勝候補にチラッと話題に上がり続けたドイツが遂にくるかもしれない。12分ミュラーがPKを確実に決めて、32分フンメルスがヘディングシュートを叩き込んでから、ブラジルの大きなスタジアムで、とある唄の大合唱がはじまる。バイエルンミュンヘン(以下ミュンヘン)の本拠地アリアンツアレーナでサポーターが唄う曲。そう。このチーム23人中7人がミュンヘン所属。5人が香川の古巣ドルトムント所属。安定している。コーチに従う人たちの集まり。2006年にサブコーチだったレーヴ監督(この時からカッコ良かった)が9年かけて作りあげてきたチームの集大成。小さなキャプテンラームは、今日も走りまわったし削ったしパスしていた。
 才能が次々育つのも凄いところだ。あれよあれよという間に初戦でハットトリックを達成したミュラーはまだ24歳。2010年5点ゲットしてW杯得点王だった彼は、今日で通算8ゴールとなる。もしかすると、クローゼともう一人の伝説ミュラーを抜く可能性があるかもしれない。
 ロイスやシュバインシュタイガーが出場していなくても全く不安を感じさせないドイツ。1か月間このまま行けるなら何かが起こる。まあ、そう簡単にいかないのがW杯なんだけど。 
 ミュラーへの頭突きでペペが一発退場になったあと、ドイツとポルトガルの選手たちが束になって口論していた。距離を置いて一人しらけた目で見つめていたロナウドが、ポルトガルのやるせなさを表現していた。




午前中の敗戦の衝撃からようやく立ち直ったので、今日いちばん書きたかったことをまとめてみました。


6月15日 この日一番の大番狂わせ

○ウルグアイーコスタリカ 1:3  フォルタレザ
 

 贔屓にしているフォルラン(現在セレッソ大阪所属)を拝まんがため、午前2時に起きた。フォルランが髪をなびかせ縦横無尽に走る。ちょいイケメンのルガノが倒され、馬面イケメンのカバー二がPKを決めてウルグアイ1点先制。前半はそんな感じだった。ところが後半になりウルグアイが翻弄され始める。前回のW杯でドイツに惜しくも破れ4位だったウルグアイを、カウンターで引っ掻き回すチームはどこですか?慌ててモニター右上のチーム名を確認する。URG対CRC。CRCって何だっけ、ええとコスタリカだ。去年仕事で訪れた小さな国。実はコーヒーが美味しくて、花鳥昆虫の種類が世界で一番多くて、軍隊がなくて、ミスインターナショナルの入賞者の多い国。はたしてサッカーが強いという印象は全くなかった。54分にキャンベルが右(コートジボワール戦の本田と同ポジション)からの鋭いシュートを決め、3分後エグるような角度からドウアルテがダイビングヘッドを決め、84分ウレーニャが左から脱力系シュートでダメ押しの1点。コスタリカの勝ちが決まる。後半だけでイエロー3枚、レッド1枚がウルグアイ側に出たことから彼らの焦りっぷりがわかる。現時点で死のD組の一位は誰も予想しなかったコスタリカ。後にイタリア、イングランド、ウルグアイが続く。5時からのイングランドーイタリア戦は書きたくないほどお粗末であった。キラキラ光るコスタリカ。彼らにとって今年は、1990年に予選リーグでスコットランドを破りベスト16まで残った時以来の快進撃になるかもしれない。


6月15日 理屈より動いたモン勝ち

○コートジボワールー日本 2:1  レシフェ

 
   日本は負けた。見事に負けた。本田が先制ゴールを決めた時「こりゃいける」と誰もが思っただろう。しかしその足の動きが止まってしまった。特に中盤からディフェンスにかけて。コートジボワール(以下CIV)と日本のデータで見てみよう。ボール支配率61:31、シュート21:7、 クロス23:12、コーナーキック8:5。つまり日本は攻めてないんだ。勝てる訳がない。川島の堅守で2失点ですんだものの、後半のコートジボワールのシュートはどんどん精度を増していた。62分にドログバが入ってからのCIVのはしゃぎようといったら。彼はCIV国におけるマラドーナのような存在なのである(詳細はどこかで)。64分にボニーが決め、66分にジェフビーニョが追加点。ドログバは点にこそ関わっていないがよく走り、日本のファウルを誘発していた。ユニフォーム着ていても裸体みたいだし。ドログバ半端ないって。大迫半端ないって、が色あせてしまった(添付リンク参照)。
 正確な右クロスで2得点につなげたオーリエは今日がW杯初出場の21歳。追いかける価値のある選手が出て来た。うれしいことである。ひとつだけ。4回もインターセプトに成功した長谷部を下げるのは間違いだった。日本、次は負けるな。お願いだから負けないでください。


 

 

 

 

  


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