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終わっちゃいましたね。しかし今回ほど女性が観たワールドカップはなかったんじゃないか。それほどイケメンもいなかったんですけどね(ごめん)

7月15日 ヒーロー不在(ごめん)でなぜ楽しかったのだろう
決勝戦 フランスークロアチア 4−2

 予選リーグでドイツがまさかの敗退。決勝トーナメントでもポルトガル、アルゼンチン、スペインが次々に陥落し、クリロナ、メッシ、イニエスタがはらはら舞い散る桜のように姿を消した。得点王リストに残ったのもかろうじてクリロナの3位のみ。ネイマールもゴールよりも過度の演技がみんなの鼻につき、転がる映像とネイマールチャレンジという不名誉なゲームとネイマールアルファベットと、ネット職人の餌食に成り果てた。
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          ©️  @chidajunsei3163     

 超弩級の主役がどんどん抜け落ちていく連続ドラマが、なぜここまで面白かったんだろう。
 ドイツーメキシコ戦、アルゼンチンーアイスランド戦は秀逸だった。どちらもドイツ、アルゼンチン以外は、世界中がメキシコとアイスランドを応援していたと思う。いや大げさでなく。相手が大物だからといって臆することなく、伸び伸びと全力でぶつかる一人一人の姿に、ピュアな自分を見つけようとしたか。普段は仕事を持ってサッカーは副業的という生き方に、昨今の副業解禁論を重ねて自分なら何をできるかと思いをくゆらせたのか。日本ーポーランド戦では企業の管理職、経営者が自分が西野監督ならどうするか、学校の先生やサッカーコーチは目の前で起きていることを子供にどう伝えるか、真剣に悩んだ。少なくとも1日は。

 改めてメディア地図を見る。特定ゾーンをカバーするテレビの上に、細かく勝手に世界中に増殖していくネットやSNSといったラインが重なったことも大きい。大きなブラウン管(あえてこの言葉を使わせていただく)で映像を見ながら、Twitterやfacebookでシェアされる個々のエピソードが各シーンをドラマタイズする。台本がないから、意外性に「自分だったらどうする」と当てはめてしまう。

 決勝戦のフランスークロアチアはそれこそ予想不可能なごった煮だった。ペナルティエリアで怪しいダイブをするグリーズマン、得たFKがマンジュキッチの頭にあたりオウンゴール。クロアチアの1点目を華麗に決めたペリシッチは、VAR判定でハンドを取られてPKに。ポグバはグリーズマンとピンポンのようなやり取りからゴールを決める。プーチン体制を批判するパンクバンドPussy Riot がピッチに乱入しクロアチアDFのロヴレンはぶち切れるわエムバペはハイファイブをするわ。
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Pussy Riot とエムバペ。なぜ?
4−1でフランス勝利必至という時点でオウンゴールをやらかしたマンジュキッチが得点したのは、ベテランの根性からだ。1998年フランスが優勝したときの優雅なシャンパンサッカーとは程遠い、10分に一度ハプニングが起こるバラエティー戦。63%ボールを保持し、ひたすら走り回ったクロアチアの選手はどう感じたのだろう。
大統領とモドリッチ
   モドリッチの涙をぬぐうクロアチア大統領

 タイミングを見計らったように表彰式で豪雨に見舞われる。ニコリともしないMVPモドリッチとヤングプレーヤー賞をもらって笑顔のエムバペ。対照的な二人が最後にステージに上がったこのシーンだけは、お約束だったか。
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 こうして一ヶ月に及ぶ壮大なドラマは終わった。
 件のアイスランドの監督は、昨日舞台を降りて歯医者に戻った。
 子供の頃からエムバペのヒーローは終始クリロナだった。暴れん坊に見えるクリロナだが、実はチャリティーには前向きで数々の貢献をしている。エムバペはW杯で獲得した報奨金約5700万円を慈善団体に寄付するという。まだ19歳。クリロナの影響をここでも受けているのかも知れない。やはりヒーローは必要だ。ワールドカップでは、こうしてヒーローがヒーローを生んでいく。すでに4年後が待ち遠しい。
Cup
   2010年からルイヴィトンは優勝カップを入れるケースを提供している

ブラジルを叩きのめしたベルギー。次はフランスと戦いますが、個の力によるフランスと全員がじわじわ強いベルギーでは、後者かなとも思っています。
 
7月6日 24戦無敗のベルギーとは
ブラジルーベルギー 1−2

 アディショナルタイム5分を含めた96分のうち80分はベルギー優勢。それほど力の差は歴然だった。

 ベルギーは今回先発を変えてきた。メルテンスと(イケメン)カラスコではなく、アフロのフェライニとシャドリという日本戦の途中交代で得点した2人を起用。

 ベルギーの大きなアフロ194cmフェライリと186cmビツェルが中盤を引っ掻き回し、ブラジルのちびっこアフロ、174cmマルセロと175cmウィリアンが左右からゲームメイクする。ときどきマッチアップするシーンもあって視覚的に面白い。しかし後半ウィリアンは交代、マルセロも疲れを見せてアフロ対決はベルギーに軍杯。
4人のアフロ
 
4人のアフロ。左上から時計回りにフェライリ、マルセロ、ビツェル、ウィリアン
 
 出場停止をくらったカミゼーロに変わりに出てきたフェルナンジーニョ。オウンゴールはするわ、マンCのチームメイト、デ・ブライネをマークするはずが見事なミドルシュートを決められるわで散々。フェルナンジーニョ、いやブラジルは運がなかった。

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   Man of the match のデ・ブライネ

 ベルギーの堅守も光った。3バックでスタートしながら守備時にはベルトンゲンがサイドバックに開く4バックになる。15番ムニエはネイマールを徹底的に潰し、アディショナルタイムの5分もボールを持ち続けるアザールの周りを走り人を寄せ付けない。尋常じゃないエネルギー。何よりもキーパーのクルトワが体を張って守った。他のキーパーなら2点は取られていたかもしれない。
ベルギー円陣
    勝利後に円陣を組むベルギー。いいチームだ

 あえて言う。10番の品格である。削られても抱きつかれても立ち上がりパスを出しドリブルで上がるアザールと、自分から転がるネイマール。後者が審判の心象を悪くしたであろうことは想像に難くない。

 この試合、日本戦では見られなかったタブレットを使っての選手への指示が、ベルギー陣に何度か見られた。戦術の徹底。イラつくチッチ監督に比べ、マルティネス監督は終始上機嫌だった。ベルギーが24戦無敗の理由はここにもある。一方で、この強豪を90分やきもきさせた日本代表をちょっぴり誇らしく思っている。
マルティネス
     
インタビューの時は眼光鋭いマルティネス監督


ブラジルが勝ちました。次はブラジルーベルギー。これを制したチームが優勝するかも。
 
7月2日 転がるし、泣く。でも奴はそこにいる
ブラジルーメキシコ 2−0

 前半を見る限りではメキシコはいいサッカーをしていた。データをインプットされていたのか、ブラジルのチャンスをことごとく潰していく。それでも時々ゴールを襲うシュートを、キーパーのオチョアはファインセーブ。見ると嬉しいが、それはメキシコの劣勢をも意味する。おっと。気がついたら自分はメキシコを応援しているじゃないか。

 同じことがピッチでも起こっていた。ブラジルの選手がボールを持つと、もの凄いブーイングが起こる。特に6番フェリペルイスとネイマールがボールを持った時。9番のジェズス(Jesus。イエスキリストか)はマンCのエース候補。21歳。地鳴りのようなブーに、もともとの泣き顔がもっと泣きそうになっている。
ジェズス
    これがジェズスの地顔である

原因はネイマールの演技だ。「彼にオスカーを!」自国のブラジルでさえ匙を投げつつある。
rollingneymar
    ネイマールコレクション

 後半メキシコにラジュンが入ってから流れが変わる。ネイマールとラジュンのマッチアップが増えて、転がる暇がなくなった。ネイマールは彼を避けて右に左に動く。チャンスは静かに訪れた。中盤でネイマールがヒールパスを出す。それを受けたウィリアンがアジャラを交わして上がりペナルティエリア左からクロスを送る。泣き顔ジェズスが足を延ばすが、届かない。惜しい!と思いきや、ネイマールがちょんと足を出した。GOOOOOOOOAL!!! いつの間にかヤツはそこにいた。
ネイマールゴール
   蹴ったボールを確認するネイマール

 その後投入された20番フィルミーノがきちんと仕事をする。後半43分、ネイマールが撃ってオチョアに弾かれた球を、走りこんできたフィルミーノがゴールへ押し込む。冷静に、着実に。不敵に笑うネイマール。腐っても鯛。そんなことわざを久々に思い出した。
フィルミーノ♡
  うまいプレーヤー。だがこのポーズはちょっと(苦笑)


アルゼンチン、お疲れ様でした。でもこれがワールドカップ。

6月30日 10代がゲームを制した
フランスーアルゼンチン 4−3

 下馬評で強いと言われていたフランス。無敗で予選リーグを突破したものの、ゲーム自体は7番グリーズマン以外さほど印象に残らなかったがゆえに、このコラムでも他の試合を優先してきた(数日前のデンマークーフランス戦は、消化試合でクソつまらなかった)。

 今日は明らかに違う。 クルマに例えるとエコモードからV8に切り替わったみたいな。長いパスの精度が違う。敵がボールを持った時のプレスの掛け方、ゴール前の切り返しやスピード。全てがリストアして戻ってきたばかりのクルマのよう。

 2ゴールを決めた10番のエムバペ(なお外国人と話すときはムバッペと発音してほしい。日本のメディアはエムベパと発音するのでそれに合わせておく)が立役者。昨年夏モナコから PSG(パリサンジェルマン)に移籍したが、その後ネイマールがPSGにやってきてから出番も減ってしまった。だからこのW杯はエムベパにとって、自由に駆けあがれるハイウエイ。まるで1998年のアンリを思わせる。 
エムバペ
   
駆け上がるエムベパ

 1998年、筆者はW杯初出場の日本を観るためフランスにいた。フランス戦は市庁舎前の広場に座って観戦。今でいうパブリックビューイングだ。そこで彗星のように現れたのが、褐色のアンリ。彼がいいパスを出したりシュートするごとにフランス人が ”ティエリ・アンリ!”と フルネームで呼ぶ。アンリは所属するモナコではフォワードでなくウイング。くすぶっていた。エメ・ジャケ監督は、それまで白人中心だったチームに旧植民地だった国からの移民その子孫たちをメンバーに迎える。ジダン、トレセゲ、そしてアンリ。シャイな20歳の青年は、礼儀正しい黒豹に変貌し、W杯で世界を魅了したのだった。
アンリ1998
   
1998年優勝カップにキスするアンリ。左の後ろ姿はデシャン

 フランスには、最初のPKを決めたグリーズマンがいる。27歳。司令塔と言われるもののメンタルが弱い。そしてミドルシュートを決めた2番パバールもいる。22歳。ここから先どこまで勝ちあがれるかはキャプテンがプレッシャーに強いかどうか。1998年にフランスが優勝した時のキャプテンは、今の監督デシャンだった。
グリーズマンとエムバペ
   ヒーローインタビュー。エムベパが答えるところにグリーズマンが飛び入り  


 

  

金曜の夜なので3試合、観ました。眠い。「監督じゃないんだから、寝なさい」と妹に怒られました。

6月22日 女優ネイマール
ブラジルーコスタリカ 2−0

 こんなに辛そうに試合をするブラジルを見たのは初めてかもしれない。カナリアイエローではなく、ブルーのユニを着ているのも違和感の一つだったか。顔を歪める。ユニを胸までたくりあげては一気に下ろす。選手の不快感がモニターを超えて伝わってくる。ネイマールは前回の試合でTwitter上で叩かれまくったせいか、髪を短くして登場。君は女優か。今日は無駄に倒れることもない。しかしミスは多い。ひとり安定しているのは左サイドのアフロ、マルセロ。
 
 コスタリカは5バック。堅守で試合を運ぶことを選ぶ。しかし後半ブラジルが右サイドのアフロ、ウィリアンを下げてから、こちらから崩すことがたやすくなり何度も速攻でブラジルゴールに襲いかかる。

 ひるまないコスタリカを相手に、ネイマールは徐々に駄々っ子に戻っていく。後半32分、ゴール前で倒され一旦PKをゲットするが、コスタリカ主将の真摯な抗議でVAR(Video Assistant Referee) 判定をすることになる。今大会から採用されたVAR 、スタジアム外にいる審判1人、アシスタントレフェリー3人、リプレイオペレーター4人が、数台のモニターを監視。ビデオ判定を行うと判断した場合、主審に伝える。あるいは主審が瞬間を見逃した場合などVAR に要求し、主審はピッチ外のモニターで何度も確認することができる。
 
 VAR で芝居が明らかになり、PK 取り消し。ネイマールは苦笑い。その後もスローインのボールをコスタリカ選手の目の前に叩きつけて、イエローカードを出される。ネイマールの苛立ち、ブラジルサポのブーイングは高まるばかり。
かぶるネイマール

 そんな流れを一気に変えたのがロスタイム1分、コウチーニョが執念で叩き込んだ1点だ。チームは喜びを隠せずコウチーニョに飛びつき祝福するが、ネイマールの顔だけが笑っていない。監督はでんぐり返し(映像もどうぞ)までしているというのに。
ブラジル監督

 チームは残り5分を流そうとするが、攻める意思を隠さないネイマールに後半から出場したコスタだけは、付き合って走る。最後にコスタが中に入り込んで出したボールを、ネイマールが左足でちょんと押し込む。ダメ押しの2点。ラスト7分間でもぎ取った勝利。歓喜にひたると思いきや、ネイマールはピッチに座って号泣する。まだ若い10番に課せられたプレッシャーは、さぞ大きかったろう。男の涙が演技だったか、誰も知らない。
泣くネイマール
 





        

    

        
 


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