9月になると、道端にBanh Trung Thu(バィンチュントウ。中秋の菓子の意味)の出店が並び出す。東南アジア名物のMoon Cakeである。日本では月餅といいますね。新宿中村屋のそれを昔よく父が食べていたっけ。

 ベトナムでは、この季節になるとお中元のように Moon Cakeが企業間に飛び交います。私の席にもベトナムのフィルムプロダクションさんから戴いたMoon Cakeが幾つかあって、まあどれもパッケージが豪華。革張りの缶とか、百科事典のような大きい本を開けると中に小箱がたくさんとか。

 ベトナムのMoon Cakeの特徴は、もっちり餡のなかにアヒルの卵の黄身の塩漬けが入っていること。最初はこの甘しょっぱい感じが苦手だったが、いまはスタッフが「Masako-san, 卵あり、なしどちらがいい?」と切ったMoon Cakeを持ってきてくれると「卵ありで」と言えるようになった。スタッフも「You Vietnamese」と笑っている。

  
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 なぜ卵の黄身なの?日本では中秋の名月というくらい、美しい月を愛でることができますね。facebookに皆さんがUpした満月をみて、ちょっと羨ましかったです。でもベトナムは雨季。しかもこのころ毎夜しとしと雨が降る。だから月に見立てて黄身を入れたという説がある。ベトナム人っぽい工夫ではあります。
(月にまつわる面白い民話があるのだが、それは稿をあらためて)


 卵のほかに、クルミや落花生、ゴマ、甘辛豚肉なども入っている上級者向け Moon Cakeもある。一方で若い世代はMoon Cake離れをしはじめているため、各企業はティラミス味、抹茶味のMoon Cakeを販売している。先週家族が日本から遊びに来ていたので、ティラミス味を一緒に試してみたが、餡というより山崎パンのクリームパンにおけるクリームにちょっとチョコ味をつけたような餡。「なんか歯磨きっぽい味がする」と母がのたまうので「ミント風味じゃないの」と返したものの、歯磨き、さもありなんと思ってしまった...まわりの皮もねっちりとしたあん饅のそれのようであり、これをMoon Cakeと呼んでいいのかと真剣に頭を抱え込む。中国人でもないのに。そういえば2年前にマレーシアで食べた、ハーゲンダッツMoon Cakeは美味しかった。チョコ味だった。

 トラディショナルなMoon Cakeにフカヒレ入れがあったので、これはスタッフに分けず(←せこい)一人こっそり食べてみたがまあお味が複雑。甘い+しょっぱい+強いフカヒレの旨味にそれを中和させようとしたのかナッツの油がガッツリ主張していて、私の繊細な味覚細胞が破壊されかけ途中でギブアップ。君はどこまで行くのか、ベトナムMoon Cake。
 
 家に帰って、住居の大家さんからもらった Moon Cakeを戴いた。シンプルで美味しい。

MoonCake


中は蓮の実の餡だけ。なあんだ、ベトナム人やればできるじゃないのとパッケージをひっくり返したら、マレーシアのベーカリーが製造者でした。
 
 旧正月のある国にMoon Cakeあり。タイや韓国のMoon Cakeはどんな味がするのだろう。ご存知の方、教えて下さい。